ローマンタン

ローマンタンは、ネパールのダウラギリ県ムスタン郡に位置する、標高3760mの場所に築かれた城郭都市です。この地は、かつてムスタン王国の首都であり、その歴史と文化が色濃く残っています。ローマンタンは、チベット語で「薬草の豊かな町」を意味し、その名の通り、周囲の豊かな自然に囲まれています。

都市は周囲1kmの城壁で囲まれ、その高さは11mから15mにも及びます。この城壁は、1350年にムスタン王国の初代国王アメパルによって築かれ、以後、町の防御と繁栄を支えてきました。ローマンタンは、チベットとインドを結ぶ「塩の道」の中継地点として栄え、岩塩をはじめとする交易品が集まる場所でした。

城壁内部は「ゾン」と呼ばれ、藩王の王宮のほか、チベット仏教寺院や僧院（ゴンパ）が点在しています。これらの寺院は、ローマンタンの宗教的な中心地としての役割を果たしており、チベット仏教の信仰が深く根付いています。また、城壁の周辺には、チベットからの難民をはじめとする人々が居住しており、多様な文化が混ざり合っています。

ローマンタンを含むアッパームスタン地域は、2008年まで「ロ王国」としてネパール国内で高度な自治が認められていました。ロ王国の国王は、普段はカトマンズに住んでいましたが、祭りの際にはローマンタンを訪れていました。ローマンタンは、政治的にも文化的な中心地であり、地域住民にとって重要な場所でした。

1991年秋にアッパームスタン地域は一般に開放されましたが、現在でも入域には制限があります。外国人が入域するには、ムスタンの文化保護のために、10日あたり700ドルの入域料をネパール政府に支払う必要があります。これは、ローマンタンを含む地域の文化と自然環境を保護するための措置です。

ローマンタンは、その歴史、文化、そして美しい景観から、多くの旅行者を魅了する場所です。この城郭都市を訪れることは、かつての王国の栄華とチベット文化の深さを肌で感じることができる貴重な体験となるでしょう。入域制限や費用はありますが、それを上回る価値がローマンタンにはあります。

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