ローラン・プティジラール

ローラン・プティジラール（Laurent Petitgirard）は、1950年 6月10日にパリで生まれたフランスの多才な音楽家です。作曲家として、そして指揮者として、その活動範囲は非常に広範に及びます。映画やテレビ番組のための音楽を数多く手がける一方で、クラシック音楽の分野でも室内楽、管弦楽曲、さらにはオペラまで、多様な作品を生み出しています。指揮者としても国際的に活動し、パリ国立歌劇場管弦楽団やベルリン・フィルハーモニー管弦楽団といった世界有数のオーケストラに客演しています。

経歴と音楽的背景

幼少期から音楽に親しんだプティジラールは、ピアニストであった父、セルジュ・プティジラールからピアノの手ほどきを受けました。作曲については、ピアニストであり作曲家でもあるアラン・クレムスキに師事し、その才能を磨きました。この二人の師から受けた指導は、後の彼の幅広い音楽活動の礎となっています。

キャリアの初期から、プティジラールはその創作活動が高く評価されてきました。1987年には、フランスの著作権管理団体であるSACD（Société des Auteurs et Compositeurs Dramatiques）より「Nouveau Talent Musique」を受賞し、才能ある若手音楽家としての地位を確立しました。2000年には、クラシック音楽専門誌「La Lettre du Musicien」が主催する「Grand Prix Lycéen des Compositeurs」を、彼のチェロ協奏曲が高く評価されて受賞しました。翌2001年には、SACDから再び栄誉が与えられ、彼の初のオペラ作品である『エレファント・マン』が「Prix Musique ex-aecquo」を受賞しました。

指揮活動と公的な役割

作曲活動と並行して、プティジラールは指揮者としても精力的に活動しました。1989年には、自身の名を冠した「パリ・フランス交響楽団」を設立し、1997年までその音楽監督を務めました。このオーケストラでの活動を通じて、彼は自身の作品やフランス音楽を積極的に紹介しました。

また、フランスの文化・芸術界における重要な役職も歴任しています。2000年には、フランスの最高学術機関の一つであるフランス学士院の芸術アカデミー会員に選出され、その功績が国家的に認められました。2003年から2004年にかけては、フランス著作権協会（SACEM）の会長を務め、音楽家の権利保護や文化振興に貢献しました。さらに、2004年から2017年までの長きにわたり、フランスで最も歴史あるオーケストラの一つであるコンセール・コロンヌの音楽監督を務め、同団の芸術水準向上に尽力しました。これらの活動を通じて、彼はフランス音楽界の中心的な人物としての存在感を確立しました。

その長年の功績に対し、フランス政府は2009年1月1日に彼にレジオンドヌール勲章「シュヴァリエ」を授与し、国家的な栄誉を称えました。

主要作品

プティジラールは様々なジャンルで数多くの作品を発表しています。特に知られる作品には以下のようなものがあります。

『伝説』（Le Légendaire, 1984年）
『ユーフォニア』（Euphonia, 1988年）
オペラ『エレファント・マン』（Joseph Merrick dit Elephant Man, 1996年 - 1998年）
チェロ協奏曲（Concerto pour violoncelle et orchestre, 1994年）
大弦楽オーケストラのための詩曲（Poème pour Grand Orchestre à Cordes, 2002年）
ヴィオラとオーケストラのためのディアローグ（Dialogue, pour alto et orchestre, 2002年 - 2003年）
『12人の寺院の守護者』（Les Douze Gardiens du Temple, 2003年 - 2004年）

映画音楽の仕事

プティジラールは、作曲家としてのキャリアの初期から映画音楽の分野でも重要な足跡を残しています。数多くのフランス映画やテレビ作品の音楽を手がけ、映像の世界に彩りを添えてきました。主な担当作品は以下の通りです。

『L'Apocalypse』（1970年）
『L'Oiseau Rare』（1973年）
『ローズバッド』（Rosebud, 1975年）
『スキャンダル』（Le Diable au cœur, 1976年）
『ポケットの愛』（L'Amant de Poche, 1978年）
『勇気が我らを逃れさせた』（Courage Fuyons, 1979年）
『アスファルト』（Asphalte, 1981年）
『Lacenaire』（1990年）
『モンマルトルのメグレ』（Maigret et les Plaisirs de la Nuit, 1991年）
『メグレと首無し死体』（Maigret et le Corps Sans Tete, 1992年）
『Drôle d'oiseaux』（1992年）
『メグレと幽霊』（Maigret et le Fantôme, 1993年）
『ヴェルサイユ訪問』（The Visit: Versailles, 1999年）
『カジモド』（Quasimodo d'El Paris, 1999年）
『Là-haut』（2003年）
* 『The Perfect Friend』（2006年）

ローラン・プティジラールは、クラシック音楽と映像音楽という二つの異なる分野で成功を収め、作曲家、指揮者、そして文化行政における要職を歴任するなど、フランス音楽界において多角的に影響力を持つ存在です。

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