ローラ・フィジィ

ローラ・フィジィ（Laura Fygi）は、1955年8月27日にオランダのアムステルダムで生まれた女性シンガーです。

幼少期と音楽の出会い

フィジィの幼少期は、父親のフィリップス社での仕事に伴い、家族と共に南米ウルグアイで8年間を過ごしました。オランダ人の父親と、かつてベリーダンサーだったエジプト人の母親の元、彼女はそこでラテン音楽やジャズに深く親しむことになります。この異文化の中で培われた経験が、後の彼女の多様な音楽スタイルに影響を与えました。

キャリアの始まりとポップグループでの成功

オランダ帰国後、ローラ・フィジィはエンターテインメントの世界へと足を踏み入れます。20歳を迎えた1975年には、多国籍グループ「Terra」の一員としてプロのキャリアをスタートさせました。その後、29歳から36歳にかけての時期（1984年から1991年）には、オランダ発の3人組女性ポップスユニット「Centerfold」に参加します。彼女たちは大胆な衣装を纏い、その印象的なパフォーマンスで注目を集め、「Dictator」などのヒット曲を生み出し、ヨーロッパ各国で広く知られる存在となりました。

Centerfold解散後、フィジィは元メンバーの一人、ローワン・ムーアと共に「The Backlot」というユニットでの活動を試みますが、これはパラディソ劇場での一度きりの公演に終わります。この頃、彼女にはすでにマーキュリー・レコードからソロデビューのオファーが舞い込んでいました。

ソロでの飛躍とジャズシンガーとしての確立

1991年、プロデューサー、ルード・ジャコブスの手によって制作された自身初のソロアルバム『瞳のささやき（Introducing）』をリリースします。このアルバムはまずヨーロッパで大きな成功を収め、オランダ国内の権威ある音楽賞であるDutch Edison Awardを受賞しました。その後、米ヴァーヴ・レコードを通じて世界各国で発表され、アメリカでもジャズシンガーとして高い評価を得ることになります。彼女のソフトでありながらも表情豊かなハスキーボイスは、ジャズハーモニカの巨匠トゥーツ・シールマンスをはじめ、クラーク・テリーやジョニー・グリフィンといった一流のミュージシャンたちに支えられ、重厚なストリングスアレンジによってさらに引き立てられました。続くセカンドアルバム『クロース・イナフ・フォー・ラヴ（Bewitched）』（1993年）も米ビルボード誌のジャズチャートに数週間にわたりランクインするなど、ソロアーティストとしての地位を確固たるものにしました。

多様な音楽性と国際的な活動

ソロ活動を始めて以降、ローラ・フィジィはジャズを核としながらも、その音楽の幅を広げていきます。ミシェル・ルグランといった著名な音楽家との共演や、レコーディングにおいてはスタンダードナンバーに加え、シャンソンやラテンの名曲などを積極的にカバーしました。特筆すべきは、その歌唱言語の多様さです。英語だけでなく、フランス語、スペイン語、ポルトガル語、さらには中国語など、様々な言語で歌声を披露しています。約20年間にわたり15枚以上のアルバムを発表し、それらは30を超える国と地域でリリースされています。この国際的な活躍と、ジャンルや言語の壁を越えた音楽への取り組みが、ローラ・フィジィを唯一無二のシンガーとしています。彼女の音楽は、ウルグアイでの幼少期の経験からソロでの成功に至るまでの道のりが凝縮された、豊かな表現力に満ちています。

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