ロールス・ロイス・ファントムVI

ロールス・ロイス ファントムVI：英国が誇る至宝の系譜

ロールス・ロイス社は、1968年から1991年にかけて、高級乗用車ファントムVIを製造しました。ファントムVの後継モデルとして登場したファントムVIは、洗練されたデザインと卓越した性能で、世界中のVIP層を魅了しました。

性能と改良点

ファントムVIは、その前身であるファントムVをベースに、いくつかの重要な改良が加えられました。まず、エンジンはV型8気筒エンジンを搭載し、シルヴァーシャドウと共通のヘッドを採用することで出力向上を実現しました。また、エアコンシステムも改良され、前後キャビンで独立した制御が可能になったことで、後部座席の乗員だけでなく、運転手も快適な車内環境を享受できるようになりました。これらの改良によって、ファントムVIはさらに快適で、洗練された走行性能を手に入れました。価格は、前モデルから大幅に上昇し、£12,844という高額な設定となりましたが、その価値に見合うだけの高級感と性能を提供しました。

トランスミッションには、静粛性に定評のある自社製またはゼネラルモーターズ製の400ターボハイドラマチック3ATを採用。スムーズで静かな走りを実現しました。7人乗りのゆったりとした室内空間は、リアシート前の折り畳み式補助席を含め、広々とした快適さを提供しました。全長6メートルを超える堂々とした車体は、その威風堂々とした風格を際立たせていました。重量2,800kgという巨体にも関わらず、最高速度は160km/hから175km/hに達するなど、その動力性能も高いレベルで両立していました。

安全基準への適合と進化

1972年には、ヨーロッパの安全基準に対応するため、リアドアのヒンジが後部から前部に変更されました。その後も、1979年には6,750ccエンジンへの換装、1982年にはシルヴァースピリット用のエンジンへの換装など、技術的な改良が継続的に行われました。これらの改良は、時代の変化に対応し、高い安全基準を満たすために行われたものでした。

生産とボディバリエーション

1991年の生産終了までに、ファントムVIは374台が製造されました。そのほとんどがフォーマルな用途を目的としており、リムジンやランドーレットが中心でした。ミュリナー・パークウォード社が手がけたコーチワークは、ファントムVIの豪華さをさらに引き立てました。リムジンとランドーレットだけで359台を数え、他にピエトロ・フルア社製のドロップヘッドクーペとカブリオレが各1台、そしてミュリナー・パークウォード社による装甲リムジン「アルファ」が5台生産されました。これらの多様なボディバリエーションは、顧客の多様なニーズに応えるものでした。

結論

ロールス・ロイス ファントムVIは、その卓越した性能、豪華な装備、そして希少性から、今もなお多くのコレクターから高い評価を受けています。374台という限られた生産台数は、その希少性をさらに高めており、まさに英国が誇る至宝と言えるでしょう。 生産期間が比較的短期間であったこと、そしてフォーマルユースを目的としたボディバリエーションの豊富さが、このモデルの独特の個性となっています。長きに渡り、世界中のVIPを乗せてきたファントムVIの歴史は、ロールス・ロイスの歴史の中でも重要な一ページを飾っています。

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