ロールス・ロイス・モーターズ

ロールス・ロイス：栄光と転落、そして新たな始まり

ロールス・ロイスの歴史は、成功と苦難、そして劇的な転換が織りなすドラマです。1906年の創業以来、航空機エンジンと高級車の製造で名を馳せてきた同社は、1970年代初頭に大きな転換期を迎えます。

経営破綻と自動車部門の分離

ロールス・ロイス社は、高級車の代名詞として世界的に知られていました。特に、その卓越した技術とクラフトマンシップは、顧客から絶大な支持を得ていました。しかし、1960年代後半から、航空機用ジェットエンジンの開発における巨額な損失や、自動車部門における技術革新の遅れが、会社の経営を圧迫。1971年には経営破綻、イギリス政府による国有化という事態に陥りました。

その後、1973年、国有化されたロールス・ロイス社の自動車部門（ベントレーを含む）は、イギリスのヴィッカース社に売却され、民営化されました。これが、ロールス・ロイス・モーターズ（Rolls-Royce Motors）の始まりです。新生ロールス・ロイス・モーターズは、伝統を受け継ぎつつ、高級車の製造・販売を継続しました。

ブランドの変遷

1998年、ヴィッカース社はロールス・ロイス・モーターズの売却を決定。そして、買収の争奪戦の末、フォルクスワーゲンが買収に成功します。しかし、この時、ブランド名やロゴはBMWに譲渡されるという、複雑な状況が発生しました。この異例の状況は、両社間の協議を経て、2003年に解決。BMWがロールス・ロイスブランド、フォルクスワーゲンがベントレーブランドの製造・販売権を得ることとなりました。

BMWは、イギリス南部に「ロールス・ロイス・モーター・カーズ」という新会社を設立し、新たな工場を建設。そこで独自に開発したロールス・ロイス車の製造・販売を開始しました。現代のロールス・ロイス車の輝きは、この時代の転換と、BMWによる新たな投資によって築き上げられたものです。

ロールス・ロイスの車種

ロールス・ロイス・モーターズ時代には、多くの象徴的なモデルが製造されました。シルヴァーシャドウ、ファントムVI、カマルグなど、それぞれが時代を反映したデザインと技術を備え、ラグジュアリーカーの歴史に名を刻んでいます。

シルヴァースピリットやシルヴァースパーといったモデルは、その後のロールス・ロイスの伝統を築いた重要な車種です。また、BMWが製造した最後のモデルであるシルヴァーセラフも、ロールス・ロイスの歴史において重要な位置を占めています。

現代のロールス・ロイス

現代のロールス・ロイスは、BMW傘下で新たな道を歩んでいます。伝統と革新を融合させ、比類なき高級車を作り続けています。かつての苦難を乗り越え、世界最高のラグジュアリーカーブランドとしての地位を確固たるものとしています。その成功の背景には、ブランドの伝統へのこだわりと、技術革新への果敢な挑戦という両面があると言えるでしょう。ロールス・ロイスの歴史は、企業の変革と、その中でのブランドの継承という、複雑で興味深い物語です。

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