ローレンス・オリファント

ローレンス・オリファント（1829年8月3日 - 1888年12月23日）は、英国の作家、旅行家、外交官であり、晩年は神秘主義者としても知られる多才な人物です。彼の生涯は、冒険と探求に満ち、その活動は世界各地に及びました。

生涯

成人まで

オリファントは、スコットランドの地主階級の出身で、父親はケープ植民地の法務長官を務めていました。幼少期を南アフリカで過ごした後、家族と共にイギリスへ帰国。その後、父親がセイロン（現在のスリランカ）へ転勤したため、オリファントも1841年頃にセイロンに移住しました。セイロンでは、父親の私設秘書として働きながら、現地の文化や環境に触れました。オリファント家は、中国からチャノキを輸入し、セイロンで栽培を試みたことでも知られています。

ロシア、カナダ、トルコ、南米を遍歴

1851年、ネパールを訪れた経験をもとに最初の小説『カトマンズへの旅』を出版。その後、ジャーナリストとして『ブラッウッド・マガジン』などに寄稿し、その活動範囲はロシア、カナダ、トルコ、南米など、世界各地に広がりました。ロシアでは、変装してセヴァストポリに潜入し、その体験を『黒海のロシア領沿岸』として出版。また、エルギン伯爵の秘書としてカナダに滞在し、アメリカとの相互条約交渉に立ち会いました。クリミア戦争中にはトルコに滞在し、現地の情勢を観察しました。さらに、カリブ海帝国建設の試みにも参加しましたが、これは失敗に終わりました。

中国および日本滞在

1858年、エルギン伯爵の私設秘書として中国に同行。その後、日本との通商条約締結のため、長崎と品川に派遣されました。この時の経験は『エルギン卿遣日使節録』として出版され、当時の日本の状況を伝える貴重な資料となっています。オリファントは、日本滞在中、外務大臣への勤務を希望し、31歳で日本大使館のスタッフに任命されました。しかし、攘夷派浪士による公使館襲撃事件に遭遇し、負傷。その治療のため帰国を余儀なくされました。帰国する際、幕府の開港延期要請を英国政府に伝えるという重要な任務を担いました。

英国への帰国からアメリカ移住

1865年、下院議員に選出されたものの、政治活動は目立ったものではありませんでした。その間、心霊主義預言者であるトマス・レイク・ハリスの影響を強く受けるようになり、1867年には議員を辞職し、ハリスが設立したコミューンに移住しました。このコミューンでの生活は、オリファントにとって精神的な変革をもたらし、後に執筆活動にも影響を与えました。日本への関心は薄れることなく、薩摩藩の秘密留学生にハリスの教えを紹介し、彼らをコミューンに導きました。

ユダヤ人のパレスチナ入植の夢

1870年、風刺小説『ピカデリー』を出版し、作家としての評価を確立しました。その後、パレスチナへのユダヤ人入植という壮大な計画に没頭し、現地での交渉や資金調達に尽力しました。しかし、この計画は実現に至りませんでした。1880年代には、妻と共にハイファに移住し、地域社会の発展に貢献。1884年には、共著『シンニュマタ』を発表。また、小説『Masollam』や代表作の一つ『Altiora Peto』を執筆。

再び英国へ

1886年、妻アリスが病死。オリファントは、妻の死後、彼女との精神的な繋がりをより強く感じるようになり、その影響を受けた『Scientific Religion』を執筆しました。1887年に英国へ戻り、『Scientific Religion』を出版。その後、アメリカでロザモンドと再婚しましたが、間もなく病に倒れ、1888年に死去しました。

家族

オリファントの家族は、彼の人格形成に大きな影響を与えました。父アンソニーは、厳格なスコットランド監督教会の信者であり、法律家として活躍。母マリアは、福音主義の伝道者であり、ローレンスを溺愛したと言われています。最初の妻アリスは、オリファントの病気も理解した上で結婚しました。後妻ロザモンドは、社会主義者ロバート・オウエンの孫娘です。

著書

オリファントは、旅行記、小説、政治評論など、多岐にわたるジャンルの著作を残しました。代表作としては、『エルギン卿遣日使節録』、『ピカデリー』、『Altiora Peto』、『Scientific Religion』などが挙げられます。これらの著作は、彼の多彩な才能と、波乱に満ちた生涯を物語っています。

ローレンス・オリファントは、その多面的な活動と独特な思想を通じて、19世紀の英国を代表する人物の一人として、今もなお多くの人々に語り継がれています。

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