チャノキ

チャノキ（茶の木）

チャノキ（学名：Camellia sinensis）は、ツバキ科ツバキ属の常緑樹です。野生では高木になりますが、栽培される際は低木に仕立てられます。その葉や茎から抽出される茶は、世界中で愛される飲料となっています。チャノキは、単に「チャ（茶）」とも呼ばれます。

分布と生育地

チャノキの原産地は、インド、ベトナム、中国西南部とされていますが、詳しいことは分かっていません。栽培のほか、野生化したものを含め、熱帯から暖帯のアジアに広く分布しています。日本では、伊豆半島や九州地方などに野生のものが自生しています。

チャノキ栽培の北限はジョージア、南限はニュージーランドとされています。霜にも比較的強く、インド北東部のダージリン地方、台湾やセイロン島の中央山地など、高地での栽培にも適しています。アッサム種は熱帯・亜[[熱帯]]原産で寒さに弱いですが、中国種は比較的寒さに強く、高地でも育成できます。また、チャノキは酸性土壌を好み、日陰にもある程度耐性があります。

特徴

チャノキの漢名は「茶」で、標準和名チャノキの語源は、中国から茶が渡来した際に漢名を音読みしたものです。常緑の低木または小高木で、高さは7メートルほどになります。栽培時は低く刈り込まれます。世界で栽培されているチャノキは、中国種（基準変種）とアッサム種の2つに大別されます。

中国種は、丈夫な枝、短い茎、細長い葉を持ち、0.9～5.5メートルに成長します。一方、アッサム種は8～15メートルにもなる高木で、大きな葉をつけるため収量が多いのが特徴です。日本の茶畑では、中国種が1メートル前後に刈り込まれて栽培されています。

葉は互生し、長さ5～7センチ[[メートル]]の長楕円状披針形です。縁には細かい鋸歯があり、表面は濃緑色で光沢があります。葉脈に沿ってくぼみがあり、表面が波打つのが特徴です。花期は晩秋で、白い5弁の花を咲かせます。果実は翌年の9月頃に成熟し、2～3個の種子を含みます。

チャノキは自家不和合性が強く、自家受粉しにくい性質を持っています。

分類

チャノキは以下の種類に分類されます。

チャノキ Camellia sinensis (L.) Kuntze
トウチャ Camellia sinensis (L.) Kuntze f. macrophylla (Siebold ex Miq.) Kitam.
ベニバナチャ Camellia sinensis (L.) Kuntze f. rosea (Makino) Kitam.
アッサムチャ（ホソバチャ） Camellia sinensis (L.) Kuntze var. assamica (J.W.Mast.) Kitam.

日本での栽培

日本には、奈良時代以前にチャノキが渡来したと考えられています。飲用される茶は、鎌倉時代に栄西が中国から持ち帰った種子の子孫とされています。現在、日本で栽培されている品種の約9割は「やぶきた」系統です。鎌倉時代以降、喫茶の習慣や茶道が広まるとともに、各地に茶産地が形成されました。

茶畑での露地栽培が主流ですが、温室栽培で通年収穫を目指す研究も行われています。

栽培植物の逸出と日本在来種説

日本では、栽培されていたチャノキが逸出し、山林で見られることも多くあります。また、人家がない場所にチャノキがある場合、かつて茶を栽培する集落があった可能性もあります。

縄文時代晩期や弥生時代の遺跡から、チャの実の化石が発見されており、古くから日本にチャノキが存在していた可能性を示唆しています。九州や四国には、在来の山茶（ヤマチャ）が自生しているという報告もあります。しかし、日本自生の在来種説に否定的な研究もあり、YListでは帰化植物とされています。

「北限の茶」

チャノキは寒さに弱いですが、日本国内では北日本でも栽培されています。「北限の茶」として知られる産地には、奥久慈茶（茨城県）、村上茶（新潟県）、桃生茶（宮城県）、気仙茶（岩手県）などがあります。さらに北には、檜山茶（秋田県）や黒石茶（青森県）など、保存・復活が試みられている産地もあります。北海道にもチャノキが植えられており、これが植栽されている最北端とされています。

利用

チャノキの葉は、嗜好品として様々な種類のお茶に加工されます。新芽には、カフェイン、テオフィリン、カテキンなどのアルカロイドや、アルギニン、テアニンなどのアミノ酸が豊富に含まれています。アミノ酸は旨味、精油は香りの元となります。

また、果実・種子から食用・化粧油の採取も可能です。特に、茶葉の栽培に比べ品質管理の手間が少ないことから、放棄された茶園の活用法としても注目されています。

飲料

チャノキの葉は、通常新芽の先2～3枚を摘み取り、緑[[茶]]、紅茶などに加工して飲用します。焙爐で乾燥させたものが碾茶で、これを挽いて粉末にしたものが抹[[茶]]です。蒸して揉みこんで成分を出しやすくしたものが玉露、新葉を玉露に準じて仕上げたものが煎[[茶]]、成葉を煎[[茶]]に準じて仕上げたものが番[[茶]]です。茶葉を軽く発酵させたものがウーロン茶、完全に発酵させたものが紅茶です。

煎[[茶]]は、1煎目に滋養成分が溶出し、2煎目からはタンニンが溶出します。ただし、飲み過ぎは便秘や肩こりの原因になることもあります。

薬用

チャノキの若葉と種子は薬用にも利用されます。若葉は茶葉（ちゃよう）、種子は茶子（ちゃし）と呼ばれ、春に採ったものが良いとされます。葉は頭痛、下痢、食べ過ぎ、喉の渇きに、種子は痰が出る咳に効果があると言われています。

茶葉に含まれるアルカロイドは発汗、興奮、利尿作用があり、チャタンニンは下痢止めの作用があると言われています。民間療法では、茶をうがい薬として利用する方法も知られています。種子は乾燥して粉末にし、服用する方法があります。緑[[茶]]、ウーロン茶、紅茶などは体を冷やす作用があるため、冷え性の人は飲みすぎに注意が必要です。

茶品種

種苗法に基づいて登録されている日本の茶品種には、以下のようなものがあります。

（品種名は省略）

文化

チャノキの花は秋の終わりから冬の初め頃に咲くため、「茶の花」は初冬の季語とされています。日本の地図記号では、茶の実を半分に切った状態を図案化したものが茶畑を表します。チャノキの花言葉は「純愛」「追憶」です。

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