ワクフ (イスラム)

ワクフとは

ワクフ（アラビア語: وَقْف）は、イスラム社会における特有の制度であり、ある財産を長期的に収益化して非営利的な目的のために活用する仕組みを指します。この言葉は「止める」や「凍結する」という意味を持ち、寄進された財産は売却や譲渡が禁止され、ほぼ永久的にその用途が固定されます。ワクフは宗教的な寄付を含むため、サダカの一部と見ることもできます。

ワクフの構成要素と種類

ワクフは主に二つの要素から構成されます。一つはワクフ物件（マウクーフ）で、もう一つはこれに伴うワクフ施設（マウクーフ・アライヒ）です。物件の収益は、慈善的な目的に使用されることが多いです。ワクフには、公共の利益を目的とした慈善ワクフと、寄進者のファミリーや知人に利益をもたらす家族ワクフが存在します。

ワクフの主な用いられ方

ワクフの資金は多様な慈善事業に貢献します。具体的には、以下のような用途があります：

• - モスクの建設と維持
• - 教育機関の設立や運営
• - 学生への奨学金の支給
• - 戦士への支援
• - 貧困層や弱者の救済
• - 水源の管理

特にモスクに関しては、当該のワクフからの収益が直接的に使用されるため、ウラマー（イスラム教の学者）などの聖職者は、その収益を生活の糧としている場合も多くあります。

歴史的背景

ワクフは公共の利益を目的にした制度として、古代から存在しました。カーディーや官僚によって監督され、所有権を放棄されたワクフ財は、私有財産や国家財産と明確に区別されます。12世紀以降、特に14世紀のペストによって人口が減少した結果、ワクフは増加しました。

オスマン帝国においては、この制度が都市インフラの維持に欠かせない要素となり、女性が自身の財産をワクフとして活用するケースもありました。これは、イスLAM法に則った権利の強調とも言えます。

家族ワクフの問題点

しかし、ワクフ制度を悪用した事例もあります。オスマン帝国では、家族ワクフと呼ばれる制度が発生し、財産の管理者が自身の利益を満たす手段として利用しました。これにより、広大なモスク用の土地が形成され、豪華な建物が各地に建設される結果となります。こうした動きは、国家の税収に影響を与え、結局は家族ワクフが禁止される事態を招きました。

現代の状況

今日においても、ワクフは重要な存在です。多くのイスラム諸国では、国家機関がその管理を行い、サウジアラビアやエジプトのような国では、特別な省が設けられています。インドネシアのように複数の宗教が共存する国でも、ワクフが地方税として機能することがあります。

このように、ワクフは歴史的背景を持ちながらも、現代においても重要な役割を果たし続けています。

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