ワラビ属

ワラビ属 (Pteridium)

ワラビ属は、コバノイシカグマ科に属するシダ植物の分類群で、特にワラビがこの属に含まれます。従来はこの種のみがこの属に含まれるとされていましたが、現在では多くの種があることが認識されています。

特徴

ワラビ属の根茎は、土壌の中を長く横に這い、表面には毛が見られるものの鱗片はありません。また、維管束は2環の網状中心柱を形成し、他のシダ植物とは異なり道管も持っています。葉は通常3回羽状複葉であり、場合によっては4回羽状複葉にまで分かれることもあります。葉の先端はある程度の間、成長を続けます。葉脈は胞子嚢を除いて基本的に遊離しており、葉の表面にも毛があります。

胞子嚢は葉脈の先端に沿って形成され、結果として葉の縁に沿って長く伸びる特徴があります。胞子嚢群は包膜と偽包膜に囲まれ、葉の内側から包膜が延び、葉の縁が反転して形成される偽包膜が胞子嚢群を覆っています。胞子自体は四面体の形をしています。和名の「ワラビ」は、日本に見られる種名から由来し、英語では「bracken」と呼ばれます。

分布と種

ワラビ属は、地球上で最も広範囲に分布するシダの一つで、南極を除く全ての大陸に存在します。寒冷地から熱帯の砂漠以外のほぼ全ての環境に生育しており、驚くことに、長い間同じ種類として扱われてきました。この広域の分布は、約2380万年前に遡る化石の証拠を元にしており、胞子の長距離移動がその要因だと考えられています。

上位分類

ワラビ属はその胞子嚢群の特徴からイノモトソウ属に似ている点があり、かつてはイノモトソウ科に分類されていました。しかし、研究が進むにつれて、その内容が広範囲すぎることや多系統であると判明し、細分化が行われました。最終的にはワラビ属と似た胞子嚢群を持つユノミネシダ属がイノモトソウ科に残され、その結果、両者の栄養体の構造がコバノイシカグマ科に近いことが明らかになりました。

下位分類

この属には多くの地域に分布する種が含まれ、その生育環境も多様であるため、地域ごとの変異が多く見られます。1941年、Tryonはこのグループを再分類し、135を超える名前を一つの種、すなわちP. aquilinumとし、その下に亜種や変種を設けました。しかし、この単形属としての扱いには疑問も持たれてきました。近年分子系統の研究により、再検討がなされ、以下の様に分類されています。特に広義のワラビはP. arachnoideumで、日本産のワラビはP. arachnoideum subsp. japonicumです。

利害

ワラビは毒草として知られており、生食すると体内のビタミンB1が破壊され、欠乏症を引き起こす可能性があります。また動物にも害があり、特にウシやウマ、ヤギでは歩行困難などの症状が見られ、重篤な場合には心拍不整を引き起こすことが知られています。このため、牧場などでの繁殖が問題視されることもあります。

一方で、ワラビは日本の代表的な山菜としても親しまれており、適切に処理されれば安全に食べることができます。特に伝統的なあく抜き法によって有害成分が除去され、食用として利用されています。また、根茎からはデンプンが取り出され、ワラビ餅として加工されます。薬用面でも利用され、漢方では利尿や消炎作用があり、様々な疾患に使われることがあります。

このようにワラビ属は、広い地理的分布を持ちながらも、食用や薬用としての価値がある一方で、注意深く扱わなければならない植物です。

もう一度検索