ワルツの王様

ワルツの王様：トムとジェリーの華麗なる演奏会

1953年公開の『ワルツの王様』（劇場公開時は『猫の宮廷音楽会』）は、アカデミー賞短編アニメ賞を受賞したトムとジェリーシリーズの名作です。原題は「Johann Mouse」。ウィーンの作曲家、ヨハン・シュトラウス2世（ワルツ王の異名を持つ）の家に住み着いたネズミ、ヨハン（ジェリー）を主人公にした物語となっています。

物語は、ヨハン・シュトラウス2世の邸宅に住むネズミ、ヨハンと、彼を捕まえようと狙う猫のトムを中心に展開します。ヨハンは、シュトラウス2世が奏でるワルツに合わせて踊るのが大好き。一方、トムはいつもヨハンを捕まえ損ねてばかりです。しかし、トムは諦めません。なぜなら、シュトラウス2世がピアノを演奏するたびに、ヨハンが踊りだすからです。

ある日、シュトラウス2世が旅行に出かけてしまいます。トムは途方に暮れます。ピアノを弾く人がいなければ、ヨハンは踊らないからです。ところが、トムは偶然、「あなたも6つの簡単なレッスンでワルツが弾ける　ヨハン・シュトラウス著」という楽譜を見つけます。

トムは楽譜を頼りにワルツの練習を始めます。そして、ついにピアノを演奏できるようになりました。トムがピアノを弾くと、ヨハンはいつものようにワルツを踊りだします。なんと、ヨハンはトムが弾いていることなどお構いなしに、音楽にのって踊り出すのです。

トムの演奏は、邸宅の使用人たちの耳にも届きます。「ご主人様はいないのに、誰が弾いているんだ？」と不思議に思った使用人たちが部屋を覗くと、そこにはピアノを弾くトムと、ワルツを踊るヨハンがいました。この光景に感動した使用人たちは拍手喝采。そして、この話は口コミで町中に広がり、ついには王様の耳にも届きます。

王様はトムとヨハンを城に招き、演奏を依頼します。城でトムがワルツを演奏し、ヨハンが踊ると、観客からは「ワンダフル！」「すばらしい！」と称賛の声があがります。しかし、演奏が終わると、トムとヨハンはいつもの追いかけっこを再開。ヨハンは城内の巣穴に逃亡し、トムは結局ヨハンを捕まえられません。

この作品では、トムとヨハンというキャラクターの魅力が存分に見られます。いつも失敗ばかりのトムですが、意外な才能を見せ、ヨハンは音楽に魅せられた姿を見せます。そして、最後はトムがページをめくり「The End」の文字が映し出されるという、本作ならではの演出も印象的です。

主要キャラクター

トム: ヨハンを捕まえようとしますが、いつも失敗します。しかし、ワルツの演奏を習得し、王様の前で演奏するまでになります。
ヨハン（ジェリー）: 音楽を愛するネズミ。トムの演奏にも関わらず、ワルツを踊り続けます。
ヨハン・シュトラウス2世（主人）: ピアノの演奏が物語の始まりと終わりを演出する重要な存在です。
屋敷の使用人たち、肉屋の小僧、広場の兵士、王様: トムとヨハンの演奏を町中に広め、王様を城に招待する役割を担います。

音楽

作品には、ヨハン・シュトラウス2世の有名なワルツが多数使用されています。「美しく青きドナウ」、「皇帝円舞曲」、「トリッチ・トラッチ・ポルカ」などが、物語を盛り上げています。

『ワルツの王様』は、トムとジェリーのユーモラスな姿と、美しいワルツの調べが絶妙に融合した、何度でも観たくなる傑作です。音楽と笑いが織りなす、忘れがたいアニメーション作品と言えるでしょう。

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