ワルツ第7番 (ショパン)

ワルツ第7番嬰ハ短調 作品64-2

フレデリック・ショパンによって1847年に作曲されたピアノ独奏のための「ワルツ第7番嬰ハ短調 作品64-2」は、彼の生前に出版された最後の作品群の一つに数えられます。この作品は、特にマズルカのリズムを取り入れた主題など、円熟期のショパンの作曲技法が集約されているかのようです。

作品の性格

ショパンが作曲したワルツは、多くの場合、実際の舞踏会で踊るためのものではなく、演奏会や個人的な鑑賞を目的とした作品として位置づけられます。本作もその例に漏れず、華麗で技巧的な「華麗なる大円舞曲 作品18」や「華麗なる円舞曲 作品34-1」などとは趣を異にし、内省的で抒情的な性格を強く持っています。ロベルト・シューマンはショパンのワルツについて、「もしワルツに合わせて踊るのであれば、それは伯爵夫人か、あるいは少なくとも男爵夫人でなければならない」と評しましたが、これはショパンのワルツが持つ洗練され、時に夢見るような世界観を示唆していると言えるでしょう。本作品もまた、そうした「舞踊から離れた芸術的なワルツ」というショパンのワルツ観を体現しています。

技術的に非常に高度な技巧を要求される他のショパン作品に比べ、このワルツは比較的演奏が容易であるため、プロの演奏家だけでなく、多くのピアノ学習者や愛好家にも広く親しまれています。その親しみやすさも、この曲が世界中で愛される理由の一つです。

楽曲構成

楽曲は嬰ハ短調、テンポ・ジュスト（適切な速さで）、4分の3拍子で書かれています。形式的には変則的なロンド形式、あるいは複合三部形式（A-B-C-B-A-Bの順に各主題が巡る構成）と解釈されることが多いです。

A主題: 冒頭で提示される主題です。左手による軽快で典型的なワルツのリズムに乗って、右手はどこか物憂げで、マズルカのリズムを特徴的に含んだ旋律を奏でます。この主題が曲全体の基調となります。
B主題（ピウ・モッソ）: A主題に続いて現れる部分です。指示通り速度を増し、まるで宙をさまようかのような、特徴的な右手の反復音形が現れ、やや不安定な雰囲気を醸し出します。
C主題（中間部）: 曲の中間部に位置し、主要な主題とは対照的な部分です。嬰ハ短調から同主長調である嬰ハ長調を経て、やがて変ニ長調へと転調します。ここでは非常に穏やかで叙情的な旋律が、柔らかな半音階を伴って現れます。この部分は、曲全体の中で最も安らぎと落ち着きを感じさせる部分と言えるでしょう。

楽曲はこれらの主題を組み合わせながら展開します。まずA主題が提示され、続いてB主題が登場します。その後、穏やかなC主題が現れ、再びB主題が繰り返されます。再び最初のA主題に戻り、楽想を繰り返した後、再びB主題が現れ、曲の終結へと向かいます。最後は、速度を緩め、静かに、そして儚く消え入るように曲を閉じます。

作品の使用例

このワルツ第7番は、その美しい旋律から、様々なメディアで使用されています。

映画: イスラエル制作の劇場アニメーション作品『戦場でワルツを』で使用されています。
テレビドラマ: 日本のテレビドラマでも使用例があります。例えば、『大都会 PARTII』の第37話「銀行ギャング徳吉」（1977年12月13日放映）や、『西部警察 PART1』、そして『少女に何が起ったか』では東音楽大学の授業シーンで使用されました。
テレビゲーム: ゲーム『ペーパーマリオRPG』のステージ2「ふしぎの森の大きな木」の中間部分でも、このワルツの旋律が使用されています。

このように、ショパンのワルツ第7番は、クラシック音楽の演奏会や学習の場だけでなく、様々な文化作品においてもその魅力的な響きを届けています。

関連情報

* 楽譜は、[国際楽譜ライブラリープロジェクト]]（IMSLP）などのオンラインリソースで参照可能です。 作品64の楽譜は[こちら).

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