ワークス〜ピンク・フロイドの遺産

ピンク・フロイドのコンピレーション・アルバム『ワークス〜ピンク・フロイドの遺産』（原題: Works）は、1983年にアメリカのキャピトル・レコードから発売されました。このアルバムは、バンドの初期から中期にかけての楽曲を幅広く収録しており、ピンク・フロイドの音楽的な変遷を辿ることができる作品となっています。

収録曲は、デビュー曲「アーノルド・レーン」から、彼らの代表作である『狂気』（1973年）からのナンバーまで、バラエティに富んでいます。特に注目すべきは、最終トラックに収録されている「エンブリオ」です。この楽曲は、1970年にハーヴェスト・レコードから発表されたオムニバス・アルバム『Picnic - A Breath of Fresh Air』に提供されたもので、ピンク・フロイド名義のアルバムには長らく本作にしか収録されていませんでした。後に『アーリー・イヤーズ 1967―1972』にも収録され、より多くのファンが触れる機会を得ましたが、当時は非常に貴重な音源でした。

アルバム全体を通して、ピンク・フロイドのサイケデリックな初期のサウンドから、より洗練されたプログレッシブ・ロックへと進化していく過程を垣間見ることができます。「アーノルド・レーン」や「シー・エミリー・プレイ」といった初期の楽曲は、シド・バレット在籍時の幻想的で実験的な音楽性を色濃く反映しています。一方、「太陽讃歌」や「吹けよ風、呼べよ嵐」は、バンドがより壮大でドラマチックなサウンドへと移行していく兆しを示しています。

『狂気』からの楽曲である「狂人は心に」と「狂気日食」は、アルバム全体のテーマである狂気や人間の心の闇を表現しており、ピンク・フロイドの音楽的な深みを感じさせます。また、「毛のふさふさした動物の不思議な歌」のような実験的な楽曲も収録されており、彼らの音楽的な探求心とユーモアセンスを垣間見ることができます。

『ワークス』は、ピンク・フロイドの入門編としても最適なアルバムです。彼らの音楽の多様性と魅力を手軽に体験できるだけでなく、初期の貴重な音源に触れることができるという点でも、ファンにとっては見逃せない作品と言えるでしょう。アメリカでのみ発売されたという点も、コレクター心をくすぐる要素となっています。

収録曲

1. One of These Days/吹けよ風、呼べよ嵐
2. Arnold Layne/アーノルド・レーン （疑似ステレオバージョン）
3. Fearless/フィアレス
4. Brain Damage/狂人は心に
5. Eclipse/狂気日食
6. Set the Controls for the Heart of the Sun/太陽讃歌
7. See Emily Play/シー・エミリー・プレイ （疑似ステレオバージョン）
8. Several Speicies of Small Funny Animals Gathered Together in a Cave and Grooving with a Pict/毛のふさふさした動物の不思議な歌
9. Free Four/フリー・フォア
10. Embryo/エンブリオ

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