ンガプー・ンガワン・ジクメ

ンガプー・ンガワン・ジクメの生涯

ンガプー・ンガワン・ジクメ（阿沛・阿旺晋美、1910年2月1日 - 2009年1[[2月23日]]）は、チベットの政治家であり、激動の20世紀において重要な役割を担いました。彼は、モンゴル系チベット貴族の家系に生まれ、その生涯はチベットの歴史における重要な転換点と深く結びついています。日本語文献では、「アポ・アワン・ジグメ」など、複数の表記が見られます。

若き日と軍歴

ラサで生まれたジクメは、イギリスに留学し、帰国後の1932年にチベット軍に入隊しました。1935年には結婚し、その後、1945年に財務大臣、1950年には俗人大臣兼カム地方の知事に就任、さらにチベット陸軍の指揮官を兼務するなど、要職を歴任しました。

チベット侵攻と降伏

1950年、中国共産党はチベットへの侵攻計画を発表。これに対し、カム地方知事であったジクメは国境警備を強化しました。しかし、同年10月7日、人民解放軍の大規模な侵攻が開始され、チャムドの戦いでチベット軍は敗北。ジクメは武器弾薬庫の爆破を命じた後、逃亡を図るも、最終的には人民解放軍に投降しました。投降後、彼は中国の思想教育を受け、地域解放委員会の副主席に昇格しました。

十七か条協定と中国への協力

1951年、ジクメは北京でのチベット代表団の一員として、中国との間で「十七か条協定」の締結に深く関わりました。この協定は、チベットの独立性を事実上否定し、中国の支配下に入ることを認めるものでしたが、チベット政府に与えられた交渉権限は限定的であり、中国側の圧力の下で署名されたとされています。協定締結後、ジクメは中国国際放送を通じてその内容を海外に宣伝。また、ラサ議会での演説では、協定を受け入れるよう訴え、中国の協力者として活動しました。

中国における地位と活動

1952年、ジクメは人民解放軍司令官の補佐に任命され、中国の政策遂行に協力しました。1950年代後半には、チベット自治区の設立に向けた準備活動に携わり、初代主任委員にダライ・ラマ14世が任命された際には、準備委員会の書記長を務めました。1958年、チベットで大規模な反乱が発生しましたが、ジクメはダライ・ラマの使いとして中国軍区司令部に観劇を断る旨を伝えるなど、中国への協力を続けました。ダライ・ラマ14世がインドへ亡命した後、ジクメはチベット自治区準備委員会の副委員長・事務局長に任命され、1965年には人民委員会主席に就任しました。

文化大革命と晩年

文化大革命中、ジクメも糾弾の対象となりましたが、その後も中国における地位を維持しました。1980年代後半にチベットで暴動が起こった際には、事態の沈静化を図りました。1991年以降は北京に住み、中国人民政治協商会議などで活動し、2008年にも副主席を務めました。2009年、99歳でその生涯を閉じました。

映画における描写

ジクメは、1997年のアメリカ映画『セブン・イヤーズ・イン・チベット』において、B・D・ウォンによって演じられています。この映画は、チベットにおけるジクメの活動や立場を一部描いていますが、史実とは異なる点も存在します。

参考文献

ジクメに関する研究は、シャキャの著書『The Dragon in the Land of Snows』や、ゴールドスタインの『A History of Modern Tibet』などで詳しく扱われています。また、様々なニュース記事やインタビューも、彼の生涯とその時代の背景を理解する上で重要な資料となります。

ンガプー・ンガワン・ジクメの生涯は、複雑な政治情勢と民族のアイデンティティが絡み合う、チベット現代史を象徴する出来事の一つと言えるでしょう。

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