チャムドの戦い

チャムドの戦い：チベット併合への道

チャムドの戦いは、1950年に中華人民共和国がチベットに対して行った軍事作戦です。この戦いは、中国によるチベット併合の重要な契機となりました。戦いの背景には、チベットの独立性を守ろうとする動きと、中国がチベットへの支配を確立しようとする意図がありました。

戦闘以前の状況

1950年3月、チベット政府代表団は中華人民共和国との対話を開始しました。しかし、会談場所を巡る意見の相違から、対話は遅延しました。チベット側はシンガポールや香港での開催を希望しましたが、中国側は北京での開催を主張しました。最終的に、1950年9月16日にデリーで会談が行われましたが、中国側はチベットが中国の一部であること、中国がチベットの国防と外交を担当することを要求しました。これらの要求に対し、チベット側は、法王とパトロンとしての関係維持を求め、中国軍の駐留には反対しました。当時、チベットには周辺国からの脅威がなく、必要であれば中国に軍事支援を求めることが可能だと考えられていたからです。

ラサでの議論が行われている最中の10月7日、中国軍は東チベットに侵攻を開始しました。中国の目的は、チベット軍をチャムドで包囲殲滅し、ラサ政府に圧力をかけ、チベットを平和的に併合するための条約に署名させることでした。

戦いの経過

人民解放軍の侵攻以前から、カム人とチベット政府の関係は良好ではありませんでした。カム人は中国軍の進撃に抵抗せず、むしろ一部は中国軍に加担しました。人民解放軍は、カム人の協力を得ながら、抵抗を受けることなくカムを占領しました。チャムドでの戦闘中、カム人の多くは人民解放軍に参加するか、戦いを傍観しました。

交渉が決裂した1ヶ月後、チベットは外国からの支援を求めましたが、その間に人民解放軍とチベット軍は増強されました。10月6〜7日には、人民解放軍はディチュ河を渡河し、10月19日にはチャムド周辺でチベット軍を包囲しました。この戦闘で、チベット軍は多大な損害を被りました。

戦闘後、人民解放軍は交戦を停止し、捕虜としたンガプー・ンガワン・ジクメをラサに送り、改めて交渉を求めました。中国は、チベットが「平和的に解放」された場合、チベットの上層部の地位と権力を保障すると約束し、チベット政府は北京に代表を送りました。

その後

人民解放軍に協力した一部のカム人は、後に反乱を起こしました。地元の武将たちは、共通の目的のために団結し、CIAの支援を受けてチュシ・ガンドゥクを結成しました。

共産党政府は、この戦いを「英国主義、奴隷主義の分離主義者」に対抗するものと定義づけました。

まとめ

チャムドの戦いは、中国がチベットへの支配を確立する上で重要な役割を果たしました。この戦いの結果、チベットは中国に併合されることとなり、その後のチベットの歴史に大きな影響を与えました。チャムドの戦いは、武力による支配がもたらす結果を示唆するものであり、国際政治における力関係の重要性を再認識させる出来事と言えるでしょう。

この戦いは、チベットと中国の関係における重要な転換点であり、その後の両者の関係を大きく左右することになりました。

参考資料

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Shakya, Tsering. The Dragon In The Land Of Snows (1999)
Robert W. Ford Captured in Tibet, Oxford University Press, 1990

関連項目

中華人民共和国によるチベット併合
中国の少数民族
中蔵戦争 (1930–1932)

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