ヴァイオリンとピアノのための協奏曲 (フンメル)

ヴァイオリンとピアノのための協奏曲 ト長調 Op.17

ヨハン・ネポムク・フンメルが手掛けたヴァイオリンとピアノのための二重協奏曲、ト長調作品17は、1805年頃にオーストリアのウィーンで世に送り出されました。この作品は、当時の著名なパトロンであったラズモフスキー伯爵に献呈されています。作曲家フンメルがかつて師事したヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトの作品、特に協奏交響曲を模範とした可能性が指摘されており、冒頭部分のリズムにはモーツァルトのピアノ協奏曲第19番との類似性が見られることも興味深い点です。

楽器編成と演奏時間

この協奏曲は、二つの独奏楽器（ヴァイオリン独奏、ピアノ独奏）に加え、以下のオーケストラ編成で演奏されます。

フルート1
オーボエ2
ファゴット2
ホルン2
弦五部（第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、コントラバス）

演奏時間は、おおよそ32分程度です。

楽曲構成

本作は、古典派協奏曲における伝統的な三つの楽章で構成されています。

第1楽章 アレグロ・コン・ブリオ ト長調 2/2拍子

活気に満ちた「アレグロ・コン・ブリオ」の指示を持つこの楽章は、ト長調、2/2拍子で書かれています。明快で躍動感のある主題が特徴です。楽章の後半、クライマックスに向けて、二つの独奏楽器によるカデンツァが効果的に配置されており、奏者の技巧を存分に披露する機会が与えられています。

第2楽章 アンダンテ・コン・モート ハ長調 2/4拍子

ハ長調、2/4拍子の「アンダンテ・コン・モート」楽章は、変奏曲形式が採用されています。まず、落ち着いた美しい主題が管弦楽のみによって提示されます。続く各変奏では、主題が様々な楽器や独奏パートによって形を変えながら展開していきます。

主題: 管弦楽のみで静かに提示されます。
第1変奏: 独奏パートが登場し、前半はピアノ単独で、後半はヴァイオリンも加わって主題に基づく装飾的な動きを奏でます。
第2変奏: オーボエが主題旋律を歌い、ピアノが軽やかなアルペジオでそれを彩ります。ここでは独奏ヴァイオリンは休止しています。
第3変奏: ファゴットが主題を提示し、独奏ヴァイオリンが華やかなアルペジオで装飾を加えます。この変奏ではピアノは登場しません。
第4変奏: 第1ヴァイオリンが主題を演奏し、ピアノがユニゾンを主体とした音型で装飾を行います。ここでも独奏ヴァイオリンは静かにしています。
第5変奏: ホルンが主題を奏でる中、ピアノ独奏とヴァイオリン独奏が共に加わり、自由に技巧を凝らした装飾を繰り広げます。
第6変奏: ピアノ独奏によるスケールを中心とした急速な音型が音楽を推進し、勢いよく展開します。独奏ヴァイオリンはこの変奏にも登場しません。この変奏の流れに乗って楽章はコーダへと向かい、最後はピアニッシモで静かに閉じられます。

第3楽章 ロンド ト長調 6/8拍子

終楽章はト長調、6/8拍子のロンド形式です。快活でリズミカルな主題が特徴的で、聴く者を惹きつけます。二つの独奏楽器は互いの技巧を競い合うかのように華やかなパッセージを奏で、音楽全体を明るく彩ります。楽章の最後近くには、再び独奏パートのためのカデンツァが置かれ、曲を締めくくるにふさわしい華やかさと迫力を与えています。

この二重協奏曲は、フンメルの円熟した作曲技法と、ヴァイオリンとピアノという二つの異なる響きを持つ楽器を巧みに組み合わせる手腕を示す作品と言えるでしょう。

もう一度検索