ヴァイオリンソナタ第2番 (オネゲル)

アルテュール・オネゲル（Arthur Honegger, 1892-1955）が作曲した《ヴァイオリンソナタ第2番》（フランス語: Deuxième Sonate pour violon et piano）は、彼のヴァイオリンとピアノのためのソナタとしては2番目に出版された作品です。作品番号はH.24が付されています。

作品の成立背景と経緯

オネゲルは第一次世界大戦が終わりに近づく1910年代後半から、室内楽の分野で意欲的な創作を続けていました。1917年には最初の弦楽四重奏曲、1918年にはヴァイオリンソナタ第1番といった比較的大規模な作品を手掛けています。本作はこれらの流れを汲むもので、1919年4月に彼の生まれた街、フランスのル・アーヴルで作曲が開始されました。

最初の楽章である第1楽章は、その年の4月から5月にかけて完成しました。続く第2楽章は、オネゲルが1919年7月18日から9月30日まで滞在したスイスで作曲され、特に滞在中の8月にエンゲルベルクで書かれたことが楽譜の日付にも記されています。そして、同年11月には全3楽章の作曲が終わり、作品の発表を待つこととなりました。

初演とその後の演奏

このソナタは、まず1920年1月8日に作曲家ダリウス・ミヨーの自宅で、私的な演奏会として披露されました。演奏は、オネゲル自身がヴァイオリンを担当し、ピアニストのアンドレ・ヴォラブールが共演しました。この席には、後に「フランス六人組」という言葉を生み出すことになる音楽評論家のアンリ・コレも出席しており、作品に強い印象を受けたと伝えられています。

公開での初演は、その年の2月28日に同じくオネゲルとヴォラブールの演奏によって、音楽院のホールで行われました。

作品に対する反響として、1920年6月20日付の両親への手紙で、オネゲルは作曲家モーリス・ラヴェルとの夕食時のエピソードを紹介しています。ラヴェルは本作について「奇妙に感じた」と述べ、特に第1楽章はあまり気に入らなかったようですが、後の2つの楽章には大変好意的だったということです。

オネゲルはその後もヴァイオリンソナタ第2番を頻繁に演奏機会に恵まれ、10月20日にはパリで、11月20日にはコンセール・トゥシェ（Concerts Touche）で再演を行っています。また、1926年12月3日に開催されたオネゲル・フェスティヴァルでも、独立音楽協会の演奏会の一環としてサル・ガヴォーで演奏されました。

本作は1924年に出版され、オネゲルの弦楽四重奏曲第1番を初演したカペレ四重奏団を創設した女性ヴァイオリニスト、フェルナンド・カペレ（Fernande Capelle）に献呈されています。

楽曲構成と特徴

ヴァイオリンソナタ第2番は全3楽章で構成され、全体の演奏時間は約13分です。

ヴァイオリンソナタ第1番と比較すると、本作では和声語法がより先進的になっており、「複雑な半音階進行」や複調に近い響きへの探求が見られます。一方で、作品全体の構成はより簡潔にまとめられており、第1番に見られたような主題の複雑な展開や規模の大きな構成は避けられています。作品の主音はロ（B）とされています。

各楽章の詳細

• - 第1楽章 Allegro cantabile

9/4拍子で書かれた楽章です。ピアノによるアルペッジョの上でヴァイオリンが歌う旋律は、作曲家ガブリエル・フォーレの音楽を思わせる雰囲気を持つと評されることがあります。形式はソナタ形式に基づいていますが、オネゲルの特徴的な手法として、再現部における主題の登場順序が提示部から逆転しています。

• - 第2楽章 Larghetto

3/4拍子。全体の基調はニ短調ですが、半音階的な音が繰り返し現れるため、明確な調性感は抑えられています。楽章の中盤には重厚な響きを伴うクライマックスが設けられており、最後のコーダではニ長調へと穏やかに解決して閉じられます。

• - 第3楽章 Vivace assai

2/4拍子の速い楽章です。この終楽章は、「シンプルでありながらも機知に富み、小粋な魅力」を持つと形容されます。構成は比較的伝統的なソナタ形式に従っており、提示部で示された主題が同じ順序で再現される「普通の」再現部を持っています。しかし、楽章の終わりは熱狂的な雰囲気のコーダとなり、唐突に結びを迎えます。

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