ヴァイオリンソナタ第36番 (モーツァルト)

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルトによって作曲されたヴァイオリンソナタ第36番 変ホ長調 K.380(374f)は、彼のヴァイオリンソナタの中でも重要な位置を占める作品の一つです。偽作とされるK.55～K.61（K.61はヘルマン・フリードリヒ・ラウパッハ作）を除けば、彼のヴァイオリンソナタとしては第28番にあたります。

概要

このソナタは、モーツァルトがマンハイム・パリへの旅行を経て、ウィーンに定住する1781年までの間に集中的に創作した12曲のヴァイオリンソナタ群を締めくくる作品として知られています。特に1781年4月7日、ウィーンにおいて完成されたと考えられています（夏に作曲されたとする説も存在します）。この時期のヴァイオリンソナタ創作の掉尾を飾る作品として、特別な意味を持っています。

本作の大きな特徴として、モーツァルト自身が自らのヴィルトゥオジティ、つまり演奏技巧を披露することを念頭に置いて作曲された側面が挙げられます。同時に、それまで往々にしてピアノの伴奏的な役割に留まりがちだったヴァイオリンパートに対しても、当時としては非常に斬新な、独立した扱いが与えられています。このソナタでは、ピアノとヴァイオリンがそれぞれに技巧的な見せ場を持ちながら、互いに対等な立場で緊密に、あたかも会話を交わすかのように音楽を展開していきます。両楽器のパートが有機的に絡み合い、響き合うことで、ヴァイオリンとピアノによる二重奏ソナタとしての理想的なバランスが、この作品においてほぼ完全に近い形で達成されていると言えるでしょう。

なお、興味深い事実として、このヴァイオリンソナタ第36番以降、モーツァルトがヴァイオリンソナタを一連のセットとしてまとめて作曲することはなくなります。この作品は、彼のこのジャンルにおける創作の一つの頂点、あるいは区切りを示すものと見なすことができます。

構成

本作は、全3楽章構成で書かれています。全体を通しての演奏時間は、およそ16分程度です。

第1楽章：アレグロ 変ホ長調
活気に満ちたソナタ形式の楽章です。通常のソナタ形式における第一、第二主題に加え、さらに第三の主題と解釈することも可能な旋律が登場するなど、楽想の多様性が特徴的です。

第2楽章：アンダンテ・コン・モート ト短調
ト短調で書かれた緩やかなテンポの楽章です。この楽章では、半音階的な音の進行が効果的に使用されており、独特の情感や陰影に富んだ印象を与えます。深い表現力を持った音楽が展開されます。

* 第3楽章：ロンドー、アレグロ 変ホ長調
「狩り」の主題を思わせる、軽快で生き生きとした主題を持つフランス風のロンド形式による終楽章です。この楽章は、作品全体を明るく、そして華やかに締めくくり、聴き手に爽快な後味を残します。

外部リンク

国際楽譜ライブラリープロジェクト（IMSLP）にて、このヴァイオリンソナタ第36番の楽譜を閲覧することができます。

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※上記内容は、提供された情報に基づき作成されています。詳細な分析や研究については、専門資料をご参照ください。

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