ヴァイオリン協奏曲 (ニールセン)

カール・ニールセン：ヴァイオリン協奏曲作品33（FS.61）

カール・ニールセンが1911年にその筆を置いたヴァイオリン協奏曲作品33（FS.61）は、このデンマークの作曲家が生涯を通じて唯一遺したヴァイオリン協奏曲として、彼の創作活動における重要な位置を占めています。交響曲の分野で既に高い名声を得ていたニールセンには、かねてより周囲からヴァイオリン協奏曲の作曲を熱望する声が多く寄せられていました。その長い間の期待が、1910年に著名なヴァイオリニスト、ペデル・メレルが故国デンマークへ帰国したことを契機に現実のものとなります。メレルとの交流が、この協奏曲誕生の直接的な発端となったのです。

作品の作曲は、1911年の夏に始まりました。ニールセンはまず、ノルウェーを代表する作曲家エドヴァルド・グリーグが避暑地としていたベルゲン近郊のトロルハウゲンにあるグリーグの邸宅に滞在し、そこで創作の第一歩を踏み出しました。その後、ニールセンはグリーグがかつて作曲に使用していたことで知られる小さな小屋に移り、静寂の中で作曲に没頭します。そして、同年12月13日、約半年にわたる創作期間を経て、このヴァイオリン協奏曲は無事完成を迎えました。興味深いことに、ニールセン自身も若い頃はヴァイオリニストとして活動しており、優れた演奏技術を持っていたにもかかわらず、これが彼の創作リストに名を連ねる唯一のヴァイオリン協奏曲となりました。

完成から間もない翌1912年2月28日、この新作協奏曲の記念すべき初演が、コペンハーゲンにて行われました。独奏ヴァイオリンは、作品の誕生に深く関わったペデル・メレルが担当し、指揮は作曲者自身であるカール・ニールセンが執り行いました。演奏はデンマーク王立劇場管弦楽団が務め、聴衆はこの新たなヴァイオリン協奏曲を初めて耳にしました。

楽曲は全2楽章構成となっており、古典的な協奏曲の3楽章形式とは異なるアプローチが取られています。全体を通しての演奏時間は約36分と、ヴァイオリン協奏曲としては標準的な規模を持っています。

楽曲構成

第1楽章：前奏曲 ラルゴ - アレグロ・カヴァレスコ
第2楽章：ポーコ・アダージョ - ロンド、アレグロ・スケルツァンド

特に第2楽章は、その内部に異なる性格を持つ部分を併せ持っています。楽章の冒頭は静かで内省的なポーコ・アダージョの性格を持ち、緩徐楽章としての役割を果たします。その後、活発でリズミカルなロンドへと移行し、フィナーレとしての力強い性格を帯びる構造となっています。このように、ニールセンは2つの楽章の中に、伝統的な多楽章形式が持つ緩急や多様性を凝縮させていると言えるでしょう。

この作品のためにニールセンが指定した楽器編成は以下の通りです。

楽器編成

独奏ヴァイオリン
フルート2（うち1人はピッコロに持ち替え）
オーボエ2
クラリネット2
ファゴット2
ホルン4
トランペット2
トロンボーン3
ティンパニ
弦五部

この編成は、当時の標準的なオーケストラ編成であり、独奏ヴァイオリンがオーケストラと対話しながら、ニールセンらしい力強くも抒情的な音楽世界を展開します。

ニールセンのヴァイオリン協奏曲作品33は、彼の多岐にわたる創作活動の中でも、弦楽器の可能性を探求した貴重な一例であり、現在も多くのヴァイオリニストや楽団によって演奏され続けています。作品に関する更なる情報は、参考文献や国際楽譜ライブラリープロジェクト（IMSLP）のウェブサイトから得ることができます。

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