ヴァイオリン協奏曲第2番 (サン＝サーンス)

ヴァイオリン協奏曲第2番ハ長調 作品58

カミーユ・サン＝サーンスが手掛けたヴァイオリン協奏曲のうち、最初に作曲されたのがこのハ長調作品58です。1858年に完成しましたが、出版は1879年と遅かったため、先に発表されたイ長調の協奏曲が第1番となり、本作が「第2番」と呼ばれることになりました。作曲家にとって、この作品は記念すべき最初の本格的な協奏曲にあたります。

作品は、初演で独奏を務めた友人でヴァイオリニストでもあるアシル・ディアンに献呈されています。1860年の初演後、この曲はしばらく演奏機会に恵まれませんでしたが、20年後の1880年にヴァイオリニストのピエール・マルシックがコンセール・ポピュレールにて再演したことで、改めて注目されるようになりました。

本作の大きな特徴は、ヴァイオリン独奏に高度な技巧が惜しみなく投入されている点にあります。他のサン＝サーンスの協奏曲と比較しても、特にヴィルトゥオーゾ的な要素が強く、終始華やかな演奏効果を追求しているのがわかります。しかし、単に技巧を誇示するだけでなく、管弦楽の表現も非常に豊かで、後の作品で見られるようなサン＝サーンスらしい洗練された書法も随所に見られます。演奏時間は概ね25分から30分程度です。

楽器編成

この協奏曲は、独奏ヴァイオリンの他に、フルート2、オーボエ2、クラリネット2、ファゴット2、ホルン2、トランペット2、ティンパニ、そして弦五部という標準的な2管編成を基本としています。特筆すべきは第2楽章で、ここではさらにハープ1とトロンボーン3本が加えられ、楽章の雰囲気に深みと色彩を与えています。

楽曲構成

曲は伝統的な3つの楽章で構成されています。

第1楽章 Allegro moderato e maestoso - a tempo piu allegro

ハ長調、12/8拍子で書かれたソナタ形式の楽章です。フェリックス・メンデルスゾーンのヴァイオリン協奏曲を彷彿とさせるように、オーケストラの短い導入に続いて、すぐに独奏ヴァイオリンが力強く主題を提示します。オーケストラが複数の副主題を奏した後、優美な第2主題がホ長調で現れます。展開部を経て再現部に入ると、提示部からかなり変形が加えられており、独奏ヴァイオリンがより主体的に音楽を進行させます。楽章の終わり近くには、協奏曲に典型的なカデンツァが置かれ、その後半では管弦楽が再び加わり、輝かしいコーダへと雪崩込みます。

第2楽章 Andante espressivo

イ短調、2/4拍子、三部形式による緩徐楽章です。この楽章では、編成に加わったハープのアルペジオとトロンボーンの穏やかな響きに乗って、独奏ヴァイオリンがどこか憂いを帯びた表情豊かな旋律を歌います。中間部はハ長調に転じ、より活動的な音楽となりますが、すぐに金管楽器のファンファーレによって閉じられます。主部が再現される際には、独奏ヴァイオリンによるオクターヴ奏法が強調され、技巧的な見せ場が作られます。この楽章は途切れることなく、次の第3楽章へと続きます。

第3楽章 Allegro scherzando quasi allegretto

ハ長調、2/4拍子のロンド形式による終楽章です。そのタイトル「スケルツォ風に、ややアレグレットで」が示すように、遊び心に満ちた活発なフィナーレであり、独奏ヴァイオリンの卓越した技巧が存分に披露されます。リズミカルな推進力を生み出すシンコペーションが効果的に用いられているのが特徴です。大規模なコーダではフガートが導入され、速度を速めながら熱狂的に全曲を締めくくります。

サン＝サーンスの初期の傑作であり、ヴァイオリンの華やかさとオーケストラの多彩な響きが見事に融合した、聴きごたえのある作品です。

もう一度検索