ヴァイオリン協奏曲第2番 (パガニーニ)

ヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調『ラ・カンパネラ』作品7

ニコロ・パガニーニ（Niccolò Paganini, 1782-1840）が作曲したヴァイオリン協奏曲第2番ロ短調作品7は、とりわけ第3楽章が「鐘のロンド」、イタリア語で『ラ・カンパネラ（La Campanella）』として広く知られている彼の代表的な作品の一つです。この愛称は、独奏ヴァイオリンとオーケストラによって鐘の響きが模倣されることに由来しています。「ラ・カンパネッラ」と表記されることもあります。

作曲と初演に関する諸説

このヴァイオリン協奏曲第2番がいつ作曲されたのかについては、今日に至るまで正確な情報は判明していません。研究者の間では、1811年から1812年、あるいは1819年、さらに1826年といった異なる年代が推定されており、資料によって見解が分かれています。また、1824年には既にヴェネツィアで曲の構想自体は完成していたものの、管弦楽化（オーケストレーション）はまだ行われていなかった、とする説も存在します。

パガニーニ自身の言葉にこの曲の存在を示す記述が見られます。1826年12月12日付の書簡の中で、彼は「クリスマスの後にサン・カルロ劇場での演奏会を計画しており、ナポリではまだ披露していないヴァイオリン協奏曲第1番と、鐘のオブリガートが付随する第2番を演奏する予定である」と記しています。この記述から、少なくとも1826年末には曲が存在していたことが示唆されます。

国外での初演は、1827年3月29日にウィーンで行われたとされています。この時の演奏はオーケストラの伴奏を伴っていたと伝えられていますが、それにもかかわらず、この協奏曲のオーケストレーションが最終的に完成したのは1838年のパリであった、と主張する研究家もいます。このように、曲の完成時期や正確な初演年代については、いまだ確定していません。

リストによる編曲

この作品、特に終楽章の『ラ・カンパネラ』は、後世の作曲家にも大きな影響を与えました。フランツ・リスト（Franz Liszt, 1811-1886）は、この曲の終楽章の旋律に霊感を受け、ピアノ独奏曲へと編曲しています。彼は1832年に、終楽章を基にした変奏曲形式のピアノ曲「パガニーニの『鐘』によるブラヴーラ風大幻想曲」を作曲しました。

さらにリストは、パガニーニの主題に基づく練習曲集に取り組み、1838年に「パガニーニによる超絶技巧練習曲」を発表しました。そして、この練習曲集を1851年に改訂し、「パガニーニによる大練習曲」として世に送り出しました。この「パガニーニによる大練習曲」の第3番として収録されているのが、最も有名なピアノ編曲版の『ラ・カンパネッラ』であり、今日においても多くのピアニストによって演奏され、広く親しまれています。

楽曲構成

本作品は全3楽章構成で、全体の演奏時間はおよそ30分です。

1. 第1楽章 アレグロ・マエストーソ（Allegro maestoso）ロ短調
この楽章は形式的に比較的自由な構造を持っています。第1主題と第2主題の性格は明確な対比を示すというよりは、連関性が見られます。オーケストラは、導入部や楽章の途中に入る間奏的な部分を除けば、ほとんどが独奏ヴァイオリンの背景としての役割に終始します。ニ長調で提示される第2主題には、パガニーニと親交があったジョアキーノ・ロッシーニの歌劇「セビリアの理髪師」の序曲の旋律に似た部分があると指摘されています。

2. 第2楽章 アダージョ（Adagio）ニ長調
歌謡風の性格を持つ緩徐楽章です。美しい旋律が奏でられますが、その根底にはどこか寂しげな感情が秘められているかのような雰囲気が漂います。

3. 第3楽章 ロンド（Rondò - Allegro moderato）ロ短調
本協奏曲の中で最も名高い「鐘のロンド」として知られる楽章です。独奏ヴァイオリンが提示する特徴的なロンド主題によって開始されます。この楽章では、独奏ヴァイオリンがフラジオレット（高音域の特殊な奏法）を用いて鐘の音を模倣する部分と、オーケストラの実際の鐘（またはベル）やそれらを模倣する楽器群による掛け合いが繰り返され、華やかで技巧的なパガニーニのヴァイオリン演奏の妙技が存分に発揮されます。

この協奏曲は、パガニーニの超絶技巧を披露するために書かれており、ヴァイオリン演奏史において重要な位置を占める作品です。特に終楽章は、ヴァイオリニストにとって大きな挑戦となる難曲でありながら、その華やかさとメロディーの魅力から、単独で演奏される機会も多くあります。

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