ヴァキューミング

熱血セールスマンの奮闘と葛藤を描いた痛快コメディ『ヴァキューミング』

2001年、BBCが製作したテレビ映画『ヴァキューミング』(Vacuuming Completely Nude in Paradise)は、数々の話題作を生み出してきたダニー・ボイル監督による、痛快なコメディ作品です。本作で主演を務めるのは、イギリスを代表する名優ティモシー・スポール。これまで繊細な役柄を演じてきた彼ですが、本作では、仕事に燃える熱血セールスマンを熱演しています。

物語は、電気掃除機のセールスマンとして働き始めたピート（マイケル・ベグリー）の視点から展開します。彼の指導役として抜擢されたのは、社内でもトップクラスの実績を誇るベテランセールスマン、トミー・ラグ（ティモシー・スポール）。トミーは、独自の、そして時に型破りな営業手法で、次々と掃除機を売っていきます。その目標は、社内で1位に輝いた者に贈られる「黄金の掃除機賞」。

トミーは、巧みな話術で高齢者を説得したり、まるで出張ホストのような演出で中年女性を魅了したりと、あらゆる手段を用いて掃除機を売りさばきます。彼の驚きの営業テクニックの数々は、時に観客を笑わせ、時に考えさせます。ピートは、トミーの傍らで、その驚くべき営業スタイルを目の当たりにし、戸惑いながらも、次第にトミーの熱意に感化されていきます。

しかし、トミーにはライバルがいました。社内で成績を上げているライバルの存在が、トミーの闘争心をさらに燃え上がらせます。ライバルに負けまいと、トミーはピートを連れて、貧困層の地域へと足を運びます。

そこで、貧しい母子家庭に掃除機を売る場面が描かれます。経済的に苦しい状況にもかかわらず、掃除機を購入した母。その光景を見たピートは、良心の呵責に耐えかね、後日、勝手に契約をキャンセルするという行動に出ます。

この出来事をきっかけに、ピートはトミーとの関係、そして仕事に対する自身の考え方に変化が生じていきます。

本作は、単なるコメディとしてだけでなく、現代社会における消費、そして仕事に対する姿勢を問いかける、奥深いテーマも内包しています。セールスマンという職業を通して描かれる、人間模様の機微と、社会の矛盾に目を向けた視点が、本作の魅力の一つです。

監督は、『トレインスポッティング』で知られるダニー・ボイル。彼の卓越した演出センスと、独特の世界観が、本作に独特の雰囲気を与えています。また、音楽はジョン・マーフィが担当。彼の音楽は、物語の緊迫感やユーモラスな雰囲気を巧みに演出しています。

キャスト陣も豪華で、ティモシー・スポールの熱演はもちろんのこと、マイケル・ベグリー、ケティ・キャヴァノー、アリス・バリー、キャロライン・アシュリーといった実力派俳優たちが脇を固めています。日本語吹き替え版では、トミー役を川久保潔、ピート役を柴本浩行が担当。彼らによる、個性豊かなキャラクター表現にも注目です。

『ヴァキューミング』は、笑いと感動、そして考えさせられる要素を兼ね備えた、傑作コメディ映画です。ダニー・ボイル監督の独特の世界観と、ティモシー・スポールの圧巻の演技によって、忘れられない作品体験が約束されています。ぜひ、一度ご覧になってみてください。

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