ヴァシーリー・ゴロヴニーン

ヴァシーリイ・ミハーイロヴィチ・ゴロヴニーンの生涯

ヴァシーリイ・ミハーイロヴィチ・ゴロヴニーン（1776年4月19日生）は、ロシア海軍の士官、探検家、学者として知られています。彼は1811年から1813年にかけて、日本における捕囚生活の体験を記した著作『日本幽囚記』で注目を集め、その作品は後の日本人論に影響を与えました。

初期の人生と教育

ゴロヴニーンはロシア帝国のモスクワ近郊のリャザン州で生まれました。9歳で両親を失い孤児となり、財政的な事情から親戚に引き取られて育ちました。その後、彼はクロンシュタット海軍兵学校に入学し、14歳で海軍士官候補生としてのキャリアをスタートさせました。1802年にはイギリスに留学し、優れた海軍士官としてのスキルを磨きました。

世界一周航海と日本での捕囚

1806年にはサンクト・ペテルブルグに戻り、ディアナ号に艦長として配属されます。そして、1807年には北太平洋の地理調査を命じられ、世界一周航海へと出発しました。しかし、1811年に日本の択捉島で捕われ、日本側の警備隊によって国後島で幽閉されることとなります。

彼の初期の解放交渉は、アイヌ語を用いた通訳を通じて行われました。特にアレクセイと上原熊次郎の通訳により、ゴロヴニーンと日本側の交渉が進められました。この交流を通じて、彼は上原にロシア語を教えることとなり、彼の苦労からも、船での捕虜生活における文化の違いが浮き彫りになりました。

1813年、ついに解放されることとなり、これを「ゴロヴニーン事件」として知られています。その後、彼は再び海軍に戻り、自らの航海技術をさらに高めていくことになります。

航海家としての栄光

1817年から1819年にかけてはカムチャツカ号での世界一周航海を成功させ、この間に彼の元にはフェルディナント・フォン・ウランゲルを筆頭に多くの若い士官が集まり、それぞれが技を競い合いました。彼の指導の下で、彼らは優れた航海家として成長していきます。

1831年、ゴロヴニーンは海軍主計総監に任命され、大規模な船舶建造を進めることとなりますが、同年、コレラの影響で亡くなります。55歳という若さでの死でした。

『日本幽囚記』の影響

ロシアからの帰国後、ゴロヴニーンは捕囚生活の体験を記した『日本幽囚記』を1816年に出版しました。この著作は三部構成で、日本での捕囚生活が描かれ、さらに日本に対する彼の考察が展開されました。この作品は、日本人に対する新たな視点を提供し、多くの言語に翻訳され、広く読まれることとなります。特に彼の記述では、日本人を「世界で最も聡明な民族」と称賛しており、キリスト教徒による偏見とは異なる視点を示しました。

『日本幽囚記』は、日本について書かれた初のロシア人による著作とも言われ、後の研究や理解において重要な位置を占めています。ゴロヴニーンの業績は、日露関係の歴史に留まらず、当時の欧米における日本観の変化にも寄与したのです。彼の引用や分析は、特に日本文化に対する理解を深めるための貴重な素材となりました。

結論

ヴァシーリイ・ゴロヴニーンの生涯は、海軍士官としての偉業以上に、異文化理解を深めるための貴重な経験でもありました。捕囚生活の記録は、時代を超えて、今日の私たちに多くの教訓を与え続けています。彼の業績は、探検や海洋学の歴史的側面を辿る上で重要な鍵となるでしょう。

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