ヴァルラーム・シャラーモフ

ヴァルラーム・チホノヴィチ・シャラーモフ

ヴァルラーム・チホノヴィチ・シャラーモフ（1907年6月18日 - 1982年1月18日）は、ソビエト時代の影響力を持つ作家です。彼の名作である『コルィマ物語』は、強制収容所での体験を基にした短編の集まりで、その文学的価値は国際的にも評価されています。その他の著作としては、短編集『反小説ヴィシェラ』や、中篇小説『第4のヴォログダ』などが知られています。

生い立ちと家庭

シャラーモフはロシア帝国のヴォログダに生まれ、代々の聖職者の家系に属していました。父親も聖職者であり、家族は裕福とは言えないが誇り高く、教育を重んじる家庭環境でした。1917年のロシア革命により、彼の家族は厳しい状況に直面します。聖職者である彼の父の立場は失われ、兄たちは軍に従事し、家庭は経済的に困窮するようになりました。シャラーモフ自身は、学生時代に高い成績を収めながらも、大学入学を果たすことができず、モスクワへ移住して独自に学び続けました。

作家としての道

1929年、彼は「レーニンの遺言」を印刷するために地下印刷所に出かけた際に逮捕され、その後の人生を大きく変える運命を辿ります。彼は4度の逮捕と投獄を経験し、その間は厳しい強制労働を強いられました。特に『コルィマ物語』を書く際の体験は、彼の作品に強く反映されています。

投獄生活と文学活動

1930年代後半、シャラーモフはシベリアでの過酷な労働を経て、1946年には医務室での仕事に移行したことが彼の文学活動に寄与しました。彼は強制収容所での経験を反映しつつ、自らの物語を紡ぎましたが、生前にはほとんど公に作品を発表することはできませんでした。『コルィマ物語』は彼の貴重な経験に基づきつつも、フィクションとしての形を取りました。

収容所文学の形成

シャラーモフの代表作『コルィマ物語』は1953年から書き始められ、彼の収容所生活が色濃く描かれている短編集から構成されています。この作品群は、彼の過去の経験を反映したもので、独特の文学的スタイルで語られています。彼はこの時代のロシア文学における大河小説の時代が終わったと感じ、短編という形を選びました。

復活と評価

1953年にスターリンが死去し、シャラーモフもようやく解放されることとなります。彼はその後も執筆を続けつつ、日常生活に復帰しました。多くの作品はサミズダートとしてひっそりと流通し、知らぬ間に国外へ流れ出ることもありました。その結果、彼の作品が国外においても注目されることになります。

最後の日々

晩年のシャラーモフは聴力と視力を失いながらも、文学活動を続けました。彼は1982年に生涯を閉じるまで、自らの体験と思索をもとに数々の短編を残しました。彼の遺した文学は、ロシアにおける反体制的な声の一部となり、後世においても大きな影響を与え続けています。今日、彼の作品は多くの言語に翻訳され、その壮絶な体験は世界中で読まれています。

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