ヴァロリス

フランスの陶芸の町、ヴァロリス：芸術と歴史が織りなす地中海の魅力

ヴァロリスは、フランス南東部、プロヴァンス＝アルプ＝コート・ダジュール地域圏アルプ＝マリティーム県に位置するコミューンです。アンティーブの近く、内陸の丘の上に歴史地区を擁し、現在では海岸線へと広がる美しい町並みは、古くからの歴史と現代的な発展が調和した景観を見せています。

古代からの歴史と芸術家の集う町

ヴァロリスの歴史は古く、鉄器時代後期にはすでに人々が定住していた痕跡が確認されています。1970年代にはサン・ベルナール地区で青銅器や鉄器が出土し、鉄器時代後期またはケルト文化圏のものと推定されています。10世紀の文書には「Vallis Aurea（黄金の谷）」という名称で記述されており、その後はレラン修道院の領地として中世を過ごしました。

1815年には、エルバ島からの脱出後、ナポレオン・ボナパルトがジュアン湾に上陸し、ヴァロリスに滞在したという歴史も持っています。19世紀後半には都市化事業が進められ、中世からの生活道路の改修や、トラム敷設、学校設立、電化などが行われ、近代化が進みました。また、シアーニュ運河からの導水によりオレンジ栽培が盛んになり、現在でもオレンジの花とビターオレンジから香料を抽出する国内唯一の都市として知られています。

20世紀に入ると、ヴァロリスは芸術家たちの集まる町としても知られるようになりました。特に第二次世界大戦後、パブロ・ピカソがヴァロリスに移住し、その魅力に惹かれたシャガールやミロなども訪れるようになりました。著名なダンサー、ジャン・マレーもヴァロリスで最期を迎えました。

陶芸：伝統と革新の融合

ヴァロリスのもう一つの特徴は、古くから続く陶芸です。何世紀にもわたって受け継がれてきた伝統的な陶器製造は、20世紀初頭にはマシエール家によって陶磁器工房として発展しました。

ヴァロリスの陶芸が世界的に注目されるきっかけとなったのは、1947年、ピカソとマドゥーラ窯の陶芸家との出会いでした。ピカソがマドゥーラ窯で制作した陶器は、翌年パリで展覧会を開催し大成功を収め、ヴァロリスへの観光客が急増しました。マドゥーラ窯は現在もピカソ作品のレプリカ製作・販売権を有しています。

1950年には、フランス文化使節の招聘により『現代日本陶芸展』が開催され、北大路魯山人や加藤唐九郎など日本を代表する陶芸家の作品が展示されました。その一部はヴァロリスの美術館に寄贈され、その後もヴァロリスと日本の陶芸界の交流は続いています。1968年には『ヴァロリス国際陶芸ビエンナーレ』が始まり、現在も世界中から陶芸家が作品を出品しています。

ヴァロリスで作られた陶器は、町の土産物屋だけでなくカンヌやニースなどにも販売され、レマンソー通りには多くの陶器専門店が軒を連ねています。

観光と交通

ヴァロリスには、ピカソ美術館と市立マニエリ美術館（陶器美術館）があり、ヴァロリス城の敷地内にあります。ピカソ美術館には、ピカソが制作した壁画やブロンズ像『羊を抱く男』が展示されています。

交通アクセスは、A8高速道路から数キロ、TERプロヴァンス・アルプ・コートダジュールが運行するグラース＝ヴァンティミーユ線ヴァロリス＝ゴルフ・ジュアン駅からもアクセス可能です。ニース・コート・ダジュール空港からも約20分と、観光にも便利な立地です。

ヴァロリスは、歴史、芸術、そして陶芸が一体となった、フランス南部の魅力あふれる町です。地中海の美しい景色と、創造性と伝統が息づく文化に触れてみませんか？

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