ヴァン・ヘイレンIII

Van Halen III (ヴァン・ヘイレンIII)

1998年に発表された『ヴァン・ヘイレンIII』は、アメリカのロックバンド、ヴァン・ヘイレンにとって通算11作目にあたるスタジオ・アルバムです。この作品は、元エクストリームのボーカリスト、ゲイリー・シェローンが参加した唯一のアルバムとして特筆されます。

制作背景

アルバム制作に至るまでの経緯は、バンドにとって激動の時期でした。1996年に長年ボーカルを務めたサミー・ヘイガーが脱退した後、一時はオリジナル・メンバーであるデイヴィッド・リー・ロスが短期間ながら復帰。ベスト・アルバム『グレイテスト・ヒッツ』(1996年)のために新曲をレコーディングしましたが、その直後に再びバンドを離れることになります。

新たなボーカリストを探す中、当時のヴァン・ヘイレンのマネージメントが、ある繋がりからエクストリームのボーカリストだったゲイリー・シェローンとのセッションを提案。このセッションを経て、シェローンの才能とバンドとのケミストリーが認められ、彼は正式にヴァン・ヘイレンのメンバーとして迎え入れられました。

アルバムタイトルに冠された「III」は、このゲイリー・シェローンを擁するラインナップを、バンドの新たな時代、すなわち「第3期」として位置づける意図が込められています。

アルバムの内容とアートワーク

本作は、エドワード・ヴァン・ヘイレンのギターワークに加え、キーボードの使用が増えるなど、音楽的な探求も垣間見られます。

収録曲の中には、インストゥルメンタル楽曲として「ニューワールド」と「プライマリー」が収められています。また、「ファイヤー・イン・ザ・ホール」は、当時公開された映画『リーサル・ウェポン4』のサウンドトラックにも採用され、注目を集めました。

アルバムのジャケットアートワークも印象的です。これは、20世紀初頭に活躍したフランク・“キャノンボール”・リチャーズという実在のパフォーマーの写真が使用されています。彼は「鋼鉄のお腹」と呼ばれ、文字通り大砲から発射された砲弾を腹部で受け止めるという驚異的なパフォーマンスで知られており、その決定的瞬間を捉えた静止画がジャケットに選ばれました。

商業的評価とその後

『ヴァン・ヘイレンIII』は、バンドの高い知名度にも関わらず、商業的には期待されたほどの大きな成功を収めることはできませんでした。特に、1986年の『5150』以降、続いていたスタジオ・アルバムの連続Billboard 200チャート1位獲得記録が、本作で残念ながら途絶える結果となりました。

アルバムリリースに伴うツアー終了後、ゲイリー・シェローンはバンドを脱退。シェローン在籍期間は短命に終わりました。また、2004年にリリースされたバンドのベスト・アルバム『ヴェリー・ベスト・オブ・ヴァン・ヘイレン』には、『ヴァン・ヘイレンIII』から楽曲が一切収録されなかったこともあり、バンドの歴史の中ではやや異質な位置づけとされることがあります。

収録曲

全曲、参加メンバー4人の共作です。

1. ニューワールド - "Neworld" - 1:51 (インストゥルメンタル)
2. ウイズアウト・ユー - "Without You" - 6:37
3. ワン・アイ・ウォント - "One I Want" - 5:35
4. フロム・アフェア - "From Afar" - 5:29
5. ダーティー・ウォーター・ドッグ - "Dirty Water Dog" - 5:33
6. ワンス - "Once" - 7:51
7. ファイヤー・イン・ザ・ホール - "Fire in the Hole" - 5:37 (映画『リーサル・ウェポン4』使用曲)
8. ジョセフィーナ - "Josephina" - 5:48
9. イヤー・トゥ・ザ・デイ - "Year to the Day" - 8:47
10. プライマリー - "Primary" - 1:31 (インストゥルメンタル)
11. バロット・オア・ザ・ブレット - "Ballot or the Bullet" - 5:48
12. ハウ・メニィ・セイ・アイ - "How Many Say I" - 6:16

参加ミュージシャン

ゲイリー・シェローン - ボーカル
エドワード・ヴァン・ヘイレン - ギター、キーボード、バッキング・ボーカル
マイケル・アンソニー - ベース、バッキング・ボーカル
アレックス・ヴァン・ヘイレン - ドラムス、パーカッション

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