ヴァージ・オブ・ラヴ

荻野目洋子『ヴァージ・オブ・ラヴ(日本語バージョン)』：英語詞アルバムの日本語化と、豪華クリエイター陣によるポップスの融合

1989年2月21日、荻野目洋子の10枚目のオリジナルアルバム『ヴァージ・オブ・ラヴ(日本語バージョン)』がビクター音楽産業(現・ビクターエンタテインメント)よりリリースされました。このアルバムは、前年12月に発表された全曲英語詞のアルバム『VERGE OF LOVE』の日本語詞バージョンとして制作されており、楽曲の並び順はオリジナルと同一です。

プロデューサーには、前作に引き続き、世界的プロデューサーであるナラダ・マイケル・ウォルデンが起用されました。日本語詞への変更にあたり、荻野目洋子は再度渡米。売野雅勇、平井森太郎、篠原仁志といった日本の著名な作詞家たちが手掛けた日本語詞は、発音に配慮したローマ字表記に変換され、ナラダ・マイケル・ウォルデンと荻野目洋子の両者によって丁寧にレコーディングされました。この過程には、英語詞と日本語詞の双方を比較検討しながら、楽曲のニュアンスを最大限に活かすための細やかな工夫が凝らされています。

アルバムには、フジテレビ系ドラマ『こまらせないで!』の主題歌として既にシングルリリースされていた「ヴァージ・オブ・ラヴ」のフルバージョンが収録されています。同ドラマの挿入歌である「スゥーピン・イン」の日本語バージョンも収録されており、ドラマとの関連性を感じさせる構成となっています。さらに、アルバム収録曲「ジス・クッド・ビー・ザ・ナイト」は、共同石油「シエットGP-1」のCMソングとして使用されました。

楽曲のクレジットを見ると、ナラダ・マイケル・ウォルデンをはじめ、Walter Afanasieff、Liz Jackson、Jeffrey Cohen、Joe Johnson、Preston Glass、JOYCE IMBESSI、CAROLYN HEDRICHなど、数々のヒット曲を手掛けた海外の作曲家たちが参加していることがわかります。これらの作曲陣と日本の作詞陣の才能が融合した、まさに国際的なコラボレーションによって生み出された作品であると言えるでしょう。

2010年には、荻野目洋子のデビュー25周年を記念したリイシュー企画として、『ヴァージ・オブ・ラヴ [+1]』が発売されました。この再発盤には、シングルバージョンである「ヴァージ・オブ・ラヴ (シングル・バージョン / 日本語)」がボーナストラックとして追加収録されています。

『ヴァージ・オブ・ラヴ(日本語バージョン)』は、単なる英語詞アルバムの翻訳にとどまらず、日本の作詞家と海外の作曲家、そして荻野目洋子自身の歌唱力が見事に融合した、オリジナリティあふれる一枚です。洗練されたサウンドと、日本語詞による情感豊かな表現が、リスナーを当時の時代背景へと誘い、聴く者の心に深く刻まれる、名盤と言えるでしょう。

収録曲

1. ジス・クッド・ビー・ザ・ナイト (THIS COULD BE THE NIGHT)：作詞：売野雅勇、作曲：Narada Michael Walden、Walter Afanasieff、Liz Jackson
2. サムシング・アバウト・ユー (SOMETHING ABOUT YOU)：作詞：売野雅勇、作曲：Narada Michael Walden、Walter Afanasieff、Liz Jackson
3. パッセージ・オブ・タイム (PASSAGES OF TIME)：作詞：平井森太郎、作曲：Narada Michael Walden、Walter Afanasieff、Jeffrey Cohen
4. ウィッケッド (WICKED)：作詞：売野雅勇、作曲：Narada Michael Walden、Joe Johnson
5. ヴァージ・オブ・ラヴ (VERGE OF LOVE)：作詞：平井森太郎、作曲：Narada Michael Walden、JOYCE IMBESSI、CAROLYN HEDRICH　※日本語フルバージョン
6. ポストカード・フロム・パリ (POSTCARD FROM PARIS)：作詞：篠原仁志、作曲：Preston Glass
7. スゥーピン・イン (SWOOPIN' IN)：作詞：売野雅勇、作曲：Narada Michael Walden、Jeffrey Cohen
8. イズ・イット・トゥルー (IS IT TRUE)：作詞：平井森太郎、作曲：Narada Michael Walden、Preston Glass、Jeffrey Cohen
9. ディジー、ディジー、ディジー (DIZZY, DIZZY, DIZZY)：作詞：売野雅勇、作曲：Narada Michael Walden、Jeffrey Cohen
10. ユー・テイク・イット・オール・アウェイ (YOU TAKE IT ALL AWAY)：作詞：篠原仁志、作曲：Narada Michael Walden、Jeffrey Cohen

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