ヴィエンチャン王国

ヴィエンチャン王国の興亡

ヴィエンチャン王国は、18世紀初頭から19世紀初頭にかけて、現在のラオス中部に存在した歴史的な王国です。元々はラーンサーン王朝の一部でしたが、1706年に分裂し、ヴィエンチャンを首都とする王国として独立しました。

ラーンサーン王朝の分裂

ラーンサーン王朝は、かつてラオスの統一王朝として栄えていましたが、17世紀末に王位継承争いが起こり、内部が混乱しました。1706年、スリニャ・ウォンサー王の孫であるキン・キッサラートとインタソーム兄弟が、ルアンパバーン王国として独立を宣言しました。当時のヴィエンチャンの王であったセタティラート2世には、この動きを抑える力がなく、アユタヤ王国に援軍を要請しました。しかし、アユタヤの狙いはラーンサーン王朝の弱体化であり、ヴィエンチャン王国とルアンパバーン王国を分断する形で和議を結ばせました。これにより、ラーンサーン王朝は分裂し、ヴィエンチャン王国が誕生しました。

王国の動揺と周辺国との関係

ヴィエンチャン王国は、成立当初から国内の動揺に悩まされました。ルアンパバーンに追随する動きや、アユタヤ王国の計略によりチャンパーサックが分離独立するなど、領土は不安定な状態が続きました。セタティラート2世の死後、オン・ブン（プンニャサーン）王が即位すると、隣国のトンブリー王朝（シャム）との関係を安定させようとしましたが、シャムとの同盟は表面的なものでした。

1773年、ヴィエンチャン王国はルアンパバーン王国の侵攻を受けますが、プンニャサーン王はシャムではなく、当時シャムと敵対していたビルマに援軍を要請します。ビルマ軍はこれを機に両国を支配下に置こうとしますが、後にシャムがビルマを撃退し、その勢いでヴィエンチャンを侵略します。1777年、シャム軍はヴィエンチャンを占領し、王国は属国となります。

シャムの支配と独立への動き

シャムは、ヴィエンチャンから多くの戦利品を持ち帰り、1780年に撤退しますが、プンニャサーン王は逃亡中に死亡します。シャムは新たにナンターセン・ポンマラオを王に据え、ヴィエンチャン王国はシャムの支配下に置かれました。しかし、1782年にシャムでチャクリー王朝が成立すると、ヴィエンチャン王国は大幅な自治権を認められるようになります。

一方で、ヴィエンチャン王国は、シェンクワーンの領土をめぐって西山朝（ベトナム）との対立を深めます。この対立により、シェンクワーンはヴィエンチャン王国領でありながら、ベトナム王朝の影響下に置かれることになります。ナンターセン・ポンマラオの死後、弟のインタウォンが王位を継ぎ、その後チャオ・アヌウォンがセタティラート3世として即位しました。セタティラート3世の治世は、ヴィエンチャン王国の黄金期となり、各地で寺院やインフラが整備されました。

王国の滅亡

1827年、セタティラート3世はシャムからの独立を目指して蜂起しますが、事前に計画が漏洩し、シャム軍によって鎮圧されます。ヴィエンチャンは徹底的に破壊され、セタティラート3世も捕らえられ獄死しました。これにより、ヴィエンチャン王国は事実上滅亡し、その領土はシャムに併合されました。

ヴィエンチャン王国が残したもの

ヴィエンチャン王国は、短期間で滅亡しましたが、その歴史はラオスの歴史において重要な位置を占めています。特に、セタティラート3世の治世に建設された数々の寺院やインフラは、当時の繁栄を物語る貴重な遺産となっています。

歴代君主

セーターティラート2世（サイ・オン・フェ、1706年 - 1730年）
ブンニャサーン（オン・ブン、1730年 - 1779年）
ナンタセーン・ポンマラオ（1781年 - 1795年）
インタウォン（1795年 - 1803年）
セーターティラート3世（チャオ・アヌウォン、1804年 - 1829年）

関連項目

ラーンサーン王朝
ルアンパバーン王国
チャンパーサック王国
シエンクアーン王国

参考文献

『ラオスの歴史』- 上東輝夫（1990年、同文館）

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