チャクリー王朝

チャクリー王朝

チャクリー王朝は、1782年にラーマ1世によって樹立されたタイの現王朝であり、首都バンコクに拠点を置くため、バンコク王朝とも呼ばれます。また、王宮がチャオプラヤー川と運河に囲まれたラッタナーコーシン島にあることから、ラッタナーコーシン王朝とも称されます。現在まで続くこの王朝は、ラーマ1世から現在のラーマ10世まで、10代の王がその名を連ねています。

チャクリーとは、初代国王ラーマ1世の高貴な称号に由来します。

歴史

ラーマ1世の即位

18世紀後半、タイではトンブリー王朝がビルマ（現ミャンマー）の侵攻を退け、一時的に国を統一しましたが、各地には軍閥が割拠しました。その中で、華人の血を引くマハー・カサットスック公爵（後のラーマ1世）も台頭します。トンブリー王朝のタークシン王は、カリスマ的な指導力で国を維持していたものの、晩年には精神を病み、その権威は失墜。その隙を突いて官吏のサン伯爵がタークシン王を幽閉し、摂政となります。しかし、遠征中だったマハー・カサットスック公爵が急遽帰還し、サン伯爵を退けました。マハー・カサットスック公爵は、トンブリー王朝下で破格の出世を遂げており、そのカリスマ性もタークシン王に劣るものではありませんでした。官吏たちの推挙により、彼は王位に就き、チャクリー王朝が成立しました。前王タークシンは処刑され、トンブリー王朝は滅亡しました。

初期王朝の統治

初期のチャクリー王朝は、絶対王政を標榜していましたが、実際の支配領域はバンコクとその周辺に限られていました。地方の行政は、中央に忠誠を誓う地方豪族や、中央から派遣された知事に委ねられ、事実上、自治が認められていました。

ラーマ2世、ラーマ3世は詩人として知られ、ラーマ4世（モンクット王）は仏教改革や西洋文化の導入に尽力しました。しかし、この時代、王は多数の妻妾と子を持ち、王族の数が膨大化し、権力は分散していきます。また、有力貴族ブンナーク家が王族と婚姻関係を結ぶことで勢力を拡大し、王の権限を侵食するようになります。

ラーマ5世の改革

ラーマ5世（チュラーロンコーン大王）は、王権と国力を高めるため、「チャクリー改革」を断行しました。西洋を手本に国内の交通・通信網を整備し、中央集権体制を確立しました。この時代、タイはラオスとカンボジア、そして南部の一部をそれぞれフランスとイギリスに奪われましたが、残った領土を死守するため、地方の王を廃止し、各県を中央政府の支配下に置きました。一方、ブンナーク家は奴隷解放などの政策により力を失い、官僚制の導入によって行政的な支配力もほぼ失いました。ラーマ5世は自ら文武官吏の長となり、貴族政治から離れた絶対王政を確立しました。

ラーマ6世の統治

ラーマ6世（ワチラーウット王）は、父王が築いた絶対王権を背景に、自身の意のままに国政を運営しました。チャクリー王朝初の留学生でもあり、愛国主義を強調しましたが、その浪費により官僚の不信感を招きました。華人系だったチャクリー王朝は、ラーマ5世の代まで中国風の姓「鄭」を名乗り、華人を優遇していましたが、ラーマ6世は華人優遇政策を転換し、華人批判を強めました。一方で、華人のタイ社会への同化を図り、属地主義を導入しました。また、後継者問題を複雑化させてしまった側面も指摘されています。一方で、軍隊の近代化、高等教育の実施、省庁の整備など、内政面での評価も高く、見方によって評価が分かれる君主です。

ラーマ7世と立憲革命

ラーマ7世（プラチャーティポック王）は、留学経験から民主主義に理解を示していましたが、ラーマ6世の財政浪費により、官僚の大幅な人員整理を迫られました。その結果、官僚の不満が高まり、立憲革命へとつながります。官僚のプラディットマヌータム男爵らが陸軍勢力と共同でクーデターを起こし、チャクリー王朝の絶対王政は崩壊しました。

ラーマ8世と傀儡の時代

ラーマ8世以降の王は、立憲君主制の下で名目的な存在となりました。太平洋戦争中には、日本との友好の象徴として利用されましたが、戦後、謎の変死を遂げました。

ラーマ9世の復権

ラーマ9世は、憲法の枠内で立憲君主として振る舞い、国王の権威を大きく回復しました。1992年の「暗黒の5月事件」では、政治対立の調停役を務め、国民からの尊敬を集めました。

ラーマ10世の即位

2016年10月13日のラーマ9世崩御後、ラーマ10世が即位しました。近年、学生らによる王室批判や改革を求める動きが活発化しましたが、王室による積極的な公務活動によって、沈静化に向かっています。

歴代王

（歴代王の表は省略）

副王

チャクリー王朝には、副王（ウパラージャ）の制度がありました。副王は、国王の補佐役でしたが、反国王勢力の拠点となることが多く、ラーマ5世以降は任命されなくなりました。

（副王、副王代理、王太子、摂政の表は省略）

王室の財産

（王室の財産に関する記述は省略）

分家

（分家に関する記述は省略）

王朝旗・王室旗

（王朝旗、王室旗の記述は省略）

脚注・出典・参考文献

（脚注・出典・参考文献のリストは省略）

関連項目

チャクリー改革
チャクリー王家
タイの国王
枢密院 (タイ)

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