ヴィクター型原子力潜水艦

ヴィクター型原子力潜水艦

ヴィクター型原子力潜水艦（Victor-class submarine）は、ソビエトおよびロシア海軍で使用される攻撃型原子力潜水艦の艦級です。NATOコードネームとして知られ、ソ連海軍では671型潜水艦という正式名称がありました。この艦級は1960年代から1970年代にかけて開発され、特に海中での優れた静粛性と多様な攻撃能力が特徴で、多くの海域で活動を行いました。

来歴

ソ連海軍は、初の原子力潜水艦としてノヴェンバー型を建造しましたが、航続距離の長さに反して実際の信頼性に課題を抱えていました。そのため、より信頼性が高く、性能の優れた攻撃型原潜の開発が求められ、1958年に「第2世代原潜」計画がスタートしました。この計画の一環として671型が開発され、1967年に就役したK-38がその最初の艦です。

アメリカ海軍の対艦・対潜攻撃能力の強化を受けて、671RT型や671RTM型が後に開発され、それぞれ7隻や27隻が建造されました。これらの艦は新型魚雷やミサイルの運用を前提に設計され、さらに静粛性向上のための改良が施されました。

設計

ヴィクター型はその設計において、水中航行効率を重視した船体形状が採用されています。それにより、前部が回転楕円形、後部が円錐形となり、流体力学的な優位性を持つ涙滴型のシルエットが形成されました。また、船体抵抗の軽減を図るため、セイル部を船体と一体化しました。

推進方式としては1軸推進が採用され、水中放射雑音の低減が重視されています。原子炉はVM-4P型加圧水型で、出力が増加し寿命も延びました。671型の初の海上公試では、34.5ノットの水中速力を記録しました。この高速性能は当時の潜水艦記録を更新したものです。

装備

ヴィクター型潜水艦は、MGK-300「ルビン」ソナーを装備し、魚雷発射指揮装置や潜水艦情報処理装置など、高度な情報処理能力を持っています。671RT型はさらに装備が強化され、対潜ミサイルを運用できるようになりました。また、魚雷発射管は自動装填装置を搭載し、洋上での補給も可能になっています。

運用史

この艦級は、冷戦中における米ソ間の軍事的緊張の中で活動を続けました。1979年にはK-38とK-481がペルシャ湾に派遣され、米機動部隊を常に射程内に捉えていたとされています。また、群狼作戦を実施するために、質と量を兼ね備えた攻撃力を持つ艦隊構成が整えられました。

冷戦の終結や財政難の影響を受けて、多くの艦が退役し、現在は北方艦隊に数隻が残るのみとなっています。特に興味深いエピソードとして、予算難の中で修理資金を得て現役を維持していた艦も存在しました。

結論

ヴィクター型原子力潜水艦は、その革新的な設計と優れた静粛性、攻撃能力により、ソ連およびロシア海軍の重要な戦力として知られています。冷戦の流れを背景に、多くの艦が運用され、歴史的な役割を果たしました。

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