ヴィサンブール

ヴィサンブール：歴史と文化が息づく国境の街

ヴィサンブール（フランス語: Wissembourg、ドイツ語: Weißenburg）は、フランス北東部、グラン・テスト地域圏のバ＝ラン県に位置するコミューンです。ドイツのラインラント＝プファルツ州との国境に接し、ローター川が市内を流れる風光明媚な場所にあります。その歴史は古く、7世紀に遡ります。

修道院を中心とした発展

ヴィサンブールの起源は、7世紀にアウストラシア貴族によってローター川の中の島に建てられた修道院にあります。この修道院は聖ペトロと聖パウロに献堂され、聖ピルマンによってベネディクト会の戒律が導入されました。その後、修道院は急速に発展し、広大な土地を所有するアルザス地方でも有数の富豪となりました。974年には司教公領に昇格し、政治的にも大きな影響力を持つようになります。11世紀には、ロマネスク様式の壮麗な教会が建設されました。

自治を求める市民と十都市同盟への加盟

12世紀から13世紀にかけて、修道院の周りに形成された村は急速に発展し、市民は修道院の支配から逃れ、自治を求めるようになります。市民は自らの議会の議員を選出する権利を獲得し、織物、ワイン、クリなどの生産によって経済的な繁栄を築きました。14世紀には、修道院からの独立を明確にするため、ヴィサンブールは十都市同盟に加盟しました。しかし、同盟の指導者たちは新しい修道院長への忠誠を拒否し、修道院との対立は深まります。

戦乱の歴史とフランスへの帰属

15世紀には、選帝侯によってヴィサンブールの町が破壊されるなど、度重なる戦乱に見舞われます。16世紀には宗教改革の波が押し寄せ、ドイツ農民戦争や三十年戦争の戦禍にも苦しみました。ヴェストファーレン条約によってアルザス地方がフランス領となると、十都市同盟はフランス王を主君と認めず、フランス軍による容赦ない遠征を受け、1677年にはコミューン全体が焼き払われ、略奪されました。その後、十都市同盟は解体され、ヴィサンブールはフランスの支配下に入ります。

近代・現代のヴィサンブール

フランス革命後、聖職者たちは追放され、修道院の資産は売却されました。1793年と1870年には、対ドイツ戦の戦場となり、普仏戦争後にはアルザス地方全体がドイツ領となりました。第一次世界大戦後の1918年にフランスに復帰しますが、第二次世界大戦中の1944年から1945年には、再び戦禍に見舞われました。1944年12月には連合国軍によって解放されるも、まもなくドイツ軍に再占領され、最終的に解放されたのは1945年3月19日でした。

現在のヴィサンブール

激動の歴史を乗り越えたヴィサンブールは、現在では美しい自然と豊かな文化が息づく街として知られています。旧市街には、中世の面影を残す美しい建物が立ち並び、歴史的な教会や博物館など、見どころも豊富です。また、周辺には北ヴォージュ地域圏自然公園が広がり、ハイキングやサイクリングなどのアウトドアアクティビティも楽しめます。ヴィサンブールは、歴史、文化、自然を満喫できる魅力的な観光地として、多くの人々を惹きつけています。

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