アウストラシア

アウストラシア：フランク王国の東部地域

アウストラシア（Austrasia）は、「東方の土地」を意味し、メロヴィング朝フランク王国の北東部を構成した地域です。現在のフランス東部、ドイツ西部、ベルギー、ルクセンブルク、オランダにまたがる広大な範囲を指します。首都はメスに置かれ、ランス、トリーア、ケルンなどの都市も支配下にありました。イタリアから見て北東に位置することから、北西を意味するネウストリアと対比される用語としても用いられました。

歴史

フランク王国の分割と再編

511年、フランク王クローヴィス1世の死後、王国は4人の息子に分割され、テウデリク1世がアウストラシアとなる領土を相続しました。テウデリク1世の子孫は、555年にクロタール1世が他の王国を統一するまでアウストラシアを統治し、558年までにフランク王国全域を継承しました。しかし、クロタール1世の死後、再び王国は4つに分割されます。567年にカリベルト1世が亡くなると、4つの王国は合併して3つとなり、アウストラシアはシギベルト1世、ネウストリアはキルペリク1世、ブルグントはグントラムがそれぞれ治めることになりました。これらの王国は、カロリング朝が台頭するまでフランク王国の行政区分として機能しました。

ネウストリアとの抗争

567年からシギベルト2世が死去する613年まで、ネウストリアとアウストラシアは絶えず争いを繰り広げ、ブルグントが調停役を務めました。特に、アウストラシアの王妃ブルンヒルドとネウストリアの王妃フレデグンドの対立は激化し、両国の戦争を激化させました。613年、貴族の反乱によりブルンヒルドは裏切られ、ネウストリア王クロタール2世に引き渡されました。クロタール2世は他の二国を支配下に置き、フランク王国を統一し、首都をパリに定めました。

宮宰の台頭とカロリング朝の成立

この時代、各王国には王と国民の仲介役として宮宰が置かれました。アウストラシアでは、アルヌルフ＝ピピン家から宮宰が選出され、彼らは徐々に地位を向上させ、最終的にメロヴィング家にとって代わり王座に就きました。623年、アウストラシアの人々はクロタール2世に自国の王を求め、クロタールは息子のダゴベルト1世をアウストラシア王に、大ピピンを宮宰に任命しました。ダゴベルト1世の死後、アウストラシアは再び空位となりますが、633年に国民が再び王を要求し、ダゴベルトは長男のシギベルト3世をアウストラシアへ派遣しました。しかし、宮廷は宮宰に牛耳られ、シギベルト3世は歴史家から「怠惰王」とみなされるようになりました。657年、宮宰グリモアルドは自分の息子キルデベルト・ラダブテを王に擁立し、662年まで王位につきました。以降、アウストラシアはアルヌルフ＝ピピン家出身の宮宰が支配する王国となり、彼らの権力基盤となりました。687年のテルトリーの戦いで、中ピピンはネウストリア王テウデリク3世を破り、フランク王国における宮宰の地位を確立しました。これにより、アウストラシアはネウストリアに対する優位性を確立し、メロヴィング朝の終焉へと向かいました。719年、フランク王国はアウストラシアの支配下で統一され、一つの国となりました。

カロリング時代以降も、アウストラシアはフランク王国の東部地域を指す言葉として、あるいは東フランク王国の同義語として用いられました。

参考文献

『世界歴史大系　フランス史1』、山川出版社、1995年。

関連項目

メロヴィング朝
* 東フランク王国

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