ヴィシュヌヴァルダン (映画監督)

ヴィシュヌヴァルダン

ヴィシュヌヴァルダンは、1976年12月6日生まれのインドの映画監督、プロデューサー、そして脚本家です。主に南インドのタミル語映画界で精力的に活動しており、その革新的な演出や脚本で知られています。

生い立ちと家族背景

チェンナイで育ったヴィシュヌヴァルダンは、映画産業と縁の深い家庭に生まれました。彼の父、クラシェーカラン氏は実業家から転身し、タミル語映画のプロデューサーとして活躍した人物です。また、弟のクリシュナ氏は俳優として活動しており、家族ぐるみで映画界に関わっています。

ヴィシュヌヴァルダンはセント・ビーズ・アングロ・インディアン・ハイアー・セカンダリー・スクールを卒業後、ロヨラ大学チェンナイ校に進学し、ヴィジュアル・コミュニケーション学を専攻しました。

キャリアの出発点

学生時代から、ヴィシュヌヴァルダンは弟のクリシュナと共にダンスや演劇といった課外活動に積極的に参加していました。学校の推薦もあり、著名な映画監督マニラトナムの作品『アンジャリ』では、他の学生と共にダンスシーンに出演する機会を得ています。その後も『Chatriyan』や『ザ・デュオ』といった作品に俳優として出演しました。大学時代には、マニラトナム作品で撮影監督を務めていたサントーシュ・シヴァンから、自身が手掛ける『ザ・テロリスト 少女戦士マッリ』への出演を打診されます。

彼はかねてより、マニラトナムやサントーシュ・シヴァンの作品から強い影響を受けており、「彼らがスクリーンに魔法をかける姿に魅了され、映画製作を学びたいと思った」と後に語っています。『ザ・テロリスト 少女戦士マッリ』への出演をきっかけに、ヴィシュヌヴァルダンはサントーシュ・シヴァンに「仕事を手伝いたい」と申し出ました。この申し出が受け入れられたことで、彼はシヴァンの助手として映画製作の道を歩み始めます。その後、ムンバイに移り、7年間にわたりシヴァンの助監督として経験を積みました。この期間には、『Fiza』や『Malli』、『アショカ大王』といった作品の製作に携わっています。

監督としての確立

ムンバイでの活動を終え、チェンナイに拠点を戻したヴィシュヌヴァルダンは、映画製作会社ジェミニ・カラー・ラボから、テルグ語映画『Allari』のタミル語リメイク版の監督を打診されました。リメイク作品での監督デビューに抵抗を感じつつも、「監督デビューの機会を逃したくない」という思いから、この企画を引き受けました。こうして製作された初の監督作『Kurumbu』では、オリジナル版に引き続きアッラリ・ナレーシュを主演に起用しましたが、残念ながら興行的な成功には至りませんでした。

次に手掛けた作品『Arinthum Ariyamalum』では、監督だけでなく脚本も自身で担当しました。実は当初、こちらが彼の監督デビュー作となる予定でした。ヴィシュヌヴァルダンによると、企画当初は著名な俳優からの出演希望がなく、製作を引き受ける映画会社も見つからなかったといいます。しかし、主要キャストが決定した後、彼はマレーシアのラジオパーソナリティであるプンナガイ・プー・ギーター氏と共同で製作会社S・J・フィルムズを設立し、『Arinthum Ariyamalum』を完成させました。プラカーシュ・ラージ、アーリヤー、ナヴディープ、サミクシャといった俳優陣が出演した本作は、批評家から高い評価を得ました。特にSify誌は「緊張感があり、かなり夢中にさせてくれるエンターテイナー」と評しています。また、興行収入は製作費の2倍を超える「スーパー・ヒット」を記録し、ヴィシュヌヴァルダンの監督としての名を確立する転機となりました。

成功の継続と新たな挑戦

『Arinthum Ariyamalum』の成功に続き、2006年にはプンナガイ・プー・ギーター氏と共に『Pattiyal』を製作し、これも商業的な成功を収めました。アーリヤ、バーラト、プージャー・ウマシャンカル、パドマプリヤー・ジャーナキラーマンが出演した同作では、ユーヴァン・シャンカル・ラージャーによる音楽が批評家から絶賛されました。また、娯楽性を保ちながらも社会的なテーマを巧みに盛り込んだヴィシュヌヴァルダンの脚本も高く評価されています。Sify誌は彼が「タミル商業映画のルールを書き換えた」とまで述べ、その手腕を称賛しました。興味深いことに、彼は脚本執筆に際して、実際にギャングに取材を行い、その生活様式を深く研究したといいます。

その後も、アジット・クマール、ナヤンターラらを起用した『Billa』や、2013年の『Arrambam』といった作品で興行的な成功を収めました。一方、アーリヤとトリシャー・クリシュナンが出演した『Sarvam』は平均的な興行成績となりました。また、2011年には『Panjaa』でテルグ語映画界にも進出しています。

そして2021年、彼は伝記映画『シェールシャー』でヒンディー語映画へのデビューを果たしました。この作品は批評的にも商業的にも大きな成功を収め、ヴィシュヌヴァルダンの名声を全国区に広げました。この功績により、彼は権威あるフィルムフェア賞の監督賞を受賞しています。

私生活

ヴィシュヌヴァルダンの妻、アヌー・ヴァルダン氏は著名な衣装デザイナーです。彼女は伝説的な俳優・歌手N・S・クリシュナンの孫にあたる人物です。アヌー氏はヴィシュヌヴァルダンの大学の同窓生であり、また二人ともサントーシュ・シヴァンの助手として働いた経験を持っています。ヴィシュヌヴァルダンが大学を卒業し、シヴァンの下で助監督を務めるようになった頃に二人は結婚しました。アヌー氏は、夫であるヴィシュヌヴァルダンが監督した全ての作品で衣装デザインを担当しており、公私にわたるパートナーとして彼を支えています。

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