ヴィシー・マリンガ

ヴィシー・マリンガ（Vusi Malinga）は、1979年 10月29日に南アフリカ共和国のイースト・ロンドンで生まれた元プロボクサーです。彼はズールー族の末裔であり、長身でリーチのあるサウスポーとして知られています。身長は170cmを超え、2009年3月の測定ではリーチが188.5cmに達しました。この体格を活かし、上から繰り出す右ジャブやアッパーを武器とする左のボクサーファイターでした。

彼の家族にはボクサーが多く、兄のパトリック・マリンガはプロボクサーとして南アフリカライト級王者になった経験があり、叔父のスラニー・マリンガは元WBC世界スーパーミドル級王者という輝かしいキャリアを持っています。なお、日本では「ブシ・マリンガ」と表記されることも少なくありません。

プロキャリアの始まりと国内タイトル

マリンガのプロボクシングキャリアは、2000年2月20日のゴッドフリー・タカラニ戦で始まりましたが、このデビュー戦は判定負けに終わりました。しかし、同年4月15日に行われたセケテ・コディサング戦でプロ初勝利を挙げ、キャリアを軌道に乗せます。

プロとして経験を積んだマリンガは、2002年7月27日にセドリック・コンウェイと南アフリカバンタム級タイトルマッチを行い、TKO勝利で国内タイトルを獲得しました。この勝利は彼のキャリアにおける重要なステップとなりました。

国際舞台での活躍

国内タイトル獲得後、マリンガはさらに上の舞台を目指します。2003年10月31日にはリンディリ・ソムシとWBCインターナショナルバンタム級王座決定戦を戦い、TKO勝ちでこの国際タイトルを獲得しました。一度は返上したものの、2005年9月30日に行われた同王座決定戦でニコシナチ・トゥシナベに勝利し、再び王座に返り咲いています。

WBCインターナショナルバンタム級王座を4度防衛した後、2007年11月30日のセルヒオ・カルー戦での5回TKO勝利を最後に、この王座を返上しました。

世界王座への挑戦

WBCインターナショナル王座返上後、マリンガは世界タイトル挑戦を目指します。2008年6月12日、元WBC世界バンタム級王者のウィラポン・ナコンルアンプロモーションと対戦。この試合では終始マリンガが優位に立ち、4回にアッパーとフックの連打でレフェリーストップによるTKO勝利を収めました。この勝利によって、当時のWBC世界バンタム級王者であった長谷川穂積への指名挑戦権を獲得しました。

そして2009年3月12日、マリンガは神戸ワールド記念ホールで世界初挑戦のリングに上がります。しかし、日本の王者である長谷川穂積の高い壁に阻まれました。試合は初回から長谷川の猛攻を受け、立て続けに3度のダウンを喫し、レフェリーストップにより1回TKOで敗れ、世界王座獲得はなりませんでした（フリーノックダウン制）。

再起と新たな挑戦

世界初挑戦に失敗したマリンガでしたが、キャリアを諦めず再起を図ります。2009年9月25日にはWBOアフリカバンタム級王座決定戦に出場し、ファダヒリ・マジアを3ラウンドKOで下して同王座を獲得しました。

さらに、2010年10月30日に行われたマイケル・ドミンゴとのIBF世界バンタム級挑戦者決定戦では、12ラウンドを戦い抜き3-0の判定勝利を収め、二度目の世界挑戦となるIBF王座への挑戦権を獲得しました。

2012年6月2日、アメリカ合衆国のホーム・デポ・センターで、アブネル・マレスが返上して空位となったIBF世界バンタム級王座を懸けてレオ・サンタ・クルスと対戦しました。しかし、この試合もマリンガにとっては厳しい戦いとなり、12ラウンド判定で0-3の完敗を喫し、二度目の世界挑戦も実りませんでした。

三度目の正直ならず

二度目の世界挑戦失敗後も、マリンガは再び世界を目指します。2013年3月23日、デイヤー・カブタンとIBF世界バンタム級挑戦者決定戦を行い、12ラウンド判定で3-0の勝利を収め、再びIBF世界王座への指名挑戦権を獲得しました。

当時のIBF王者ジェイミー・マクドネルがマリンガとの指名試合を行わない姿勢を見せたため、IBFはマクドネルから王座を剥奪しました。これにより、空位となったIBF世界バンタム級王座の決定戦にマリンガが出場することが有力となります。

そして2013年12月21日、イングランドでスチュアート・ホールとIBF世界バンタム級王座決定戦を行いました。マリンガにとって三度目の世界挑戦となりましたが、この試合も12ラウンド判定で0-3と敗れ、残念ながら世界王座獲得はなりませんでした。

まとめ

ヴィシー・マリンガのプロキャリア戦績は、27戦21勝（12KO）5敗1分です。彼は南アフリカバンタム級王座、WBCインターナショナルバンタム級王座、WBOアフリカバンタム級王座を獲得しましたが、世界王座には三度挑戦したものの、いずれも勝利を収めることはできませんでした。しかし、国内、地域、そして世界レベルで強敵と拳を交えたそのキャリアは、多くのボクシングファンに記憶されています。

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