ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ

ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレ：古代ローマの栄華を今に伝える壮麗な別荘

シチリア島内陸部のピアッツァ・アルメリーナ郊外に位置するヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレは、4世紀初頭に建設された古代ローマの豪華な別荘です。その見事なモザイク画と建築様式は、当時のローマ貴族の豊かな生活を今に伝えています。1997年にはユネスコの世界遺産に登録され、その文化的価値が世界的に認められました。

歴史

ヴィッラの建設は4世紀初頭に遡ると考えられています。周辺の広大な農園（ラティフンディア）の中心的な邸宅として建てられ、約150年間使用されました。その後、東ゴート王国、ヴァンダル王国、ビザンツ帝国、アラブ人と支配者が変わる中でも居住は継続されましたが、12世紀には完全に放棄され、住民は現在のピアッツァ・アルメリーナへと移住したと考えられています。

ヴィッラはその後、長い間人々の記憶から忘れ去られ、一部は農地として利用されました。19世紀初頭に数本の円柱が再発見されたのをきっかけに、発掘調査が始まりました。本格的な発掘は1929年と1935年から39年の間に行われ、1950年代から60年代にかけての大規模な発掘によって、現在の姿が現れました。1970年代にも小規模な発掘が行われ、現在も調査が続けられています。

建設目的

ヴィッラの建設目的は、住居としての利用が主であったと考えられています。ラティフンディアの経営者の邸宅として、また公的な役所の機能も果たしていた可能性があります。しかし、商業的な目的や生産拠点として利用されていた可能性は低いとされています。

内部構造

ヴィッラは平屋構造で、中央には柱列に囲まれた中庭があります。中庭を中心に、公的な部屋や私的な部屋が配置されています。西側からはアトリウム（開口部付きの中央大広間）を通って中庭へ入ることができます。北西側には浴場、北側にはゲストルームがあったと推測されています。東側には私的な部屋と巨大なバシリカがあり、南側にも部屋が設けられていますが、その用途は不明です。

特に有名なのは「10貴婦人の間」と呼ばれる部屋で、その床にはビキニ姿の女性たちのモザイク画が描かれています。このモザイクは、当時の人々の生活やファッションを今に伝える貴重な資料となっています。

モザイク画

ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレの最大の見どころは、床や壁を飾る壮大なモザイク画です。狩猟、神話、日常生活など、様々なテーマのモザイク画が保存状態良く残されており、その芸術性と歴史的価値は高く評価されています。特に「ビキニ姿の女性」のモザイクは、世界的に有名で、多くの観光客を魅了しています。

世界遺産登録基準

ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレは、以下の世界遺産登録基準を満たし、世界遺産に登録されました。

(1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
(2) ある期間を通じてまたはある文化圏において、建築、技術、記念碑的芸術、都市計画、景観デザインの発展に関し、人類の価値の重要な交流を示すものであること。
(3) 現存するまたは消滅した文化的伝統または文明の、唯一のまたは少なくとも稀な証拠であること。

参考文献

Petra C. Baum-vom Felde, Die geometrischen Mosaiken der Villa bei Piazza Armerina, Hamburg 2003, ISBN 3-8300-0940-2
Brigit Carnabuci: Sizilien – Kunstreiseführer, DuMont Buchverlag, Köln 1998, ISBN 3-7701-4385-X.
Luciano Catullo and Gail Mitchell 2000. The Ancient Roman Villa of Casale at Piazza Armerina: Past and Present
R. J. A. Wilson: Piazza Armerina, Granada Verlag: London 1983, ISBN 0-246-11396-0.
A. Carandini - A. Ricci - M. de Vos, Filosofiana, The villa of Piazza Armerina. The image of a Roman aristocrat at the time of Constantine, Palermo 1982.
S. Settis, "Per l'interpretazione di Piazza Armerina", in Mélanges de l'Ecole Française de Rome. Antiquité 87, 1975, 2, pp. 873-994.

まとめ

ヴィッラ・ロマーナ・デル・カサーレは、古代ローマの建築技術と芸術性が結集した貴重な遺跡です。豪華なモザイク画は、当時の人々の生活や文化を現代に伝え、訪れる人々を魅了し続けています。この遺跡は、古代ローマの歴史と文化を学ぶ上で、非常に重要な場所であり、世界中の人々にとって貴重な遺産と言えるでしょう。

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