ヴィディン

ブルガリア北西部の要衝、ヴィディン：歴史と文化の織りなす街

ブルガリア北西部、ドナウ川の南岸に位置するヴィディン市は、セルビアおよびルーマニアとの国境に近く、古くから重要な交通の要衝として栄えてきました。ドナウ川を挟んでルーマニアのカラファトとフェリーで結ばれ、現在も活気ある港町として発展を続けています。ブルガリア国内では19番目に人口規模の大きい都市ですが、第二次世界大戦中には深刻な人口減少を経験しました。ヴィディン周辺にはヴラフ人も居住しており、古くからの歴史と多様な文化が交錯する地域です。

古代からの歴史

ヴィディンの歴史は古く、紀元前にはケルト人の集落ドゥノニアが存在し、その後、ローマ人が要塞都市ボノニアを建設しました。その後、上モエシアの重要な拠点となり、スラヴ人がこの地を「ビディン」あるいは「ブディン」と呼ぶようになり、これが現在の地名のもととなっています。

中世の栄華と幾多の変遷

10世紀から14世紀にかけて建設されたババ・ヴィダ要塞はヴィディンの象徴的な存在です。中世においてヴィディンはブルガリアの重要な都市であり、主教座が置かれ、地域の中心地として繁栄しました。第一次ブルガリア帝国の皇帝サムイルの支配下にあった時期や、ビザンティン帝国との攻防、そして第二次ブルガリア帝国の勃興期には、デスポト（地方の有力者）が帝国の要職に就き、皇帝を輩出するほど重要な都市となりました。13世紀にはシシュマン家によって統治され、1356年にはブルガリア皇帝イヴァン・アレクサンダルによって息子イヴァン・スラツィミルに与えられ、ヴィディン王国が成立しました。しかし、1365年にはハンガリー王国の侵攻を受け、ハンガリー支配下に置かれますが、1369年にブルガリアが奪還。その後、1393年にオスマン帝国に制圧され、中世ブルガリア帝国は終焉を迎えました。オスマン帝国支配下でも、ヴィディンは地元のブルガリア人が自治を保つなど、独自の道を歩みましたが、1396年のニコポリスの戦いの後、完全にオスマン帝国の支配下に置かれました。オスマン帝国統治末期には、オスマン・パズヴァントウルが独立勢力を築き、中心地として機能しました。1850年には農民反乱、1885年のセルビア＝ブルガリア戦争ではセルビア軍の支配下に入ったものの、ブルガリア軍によって奪還されています。

見どころ

ヴィディンには、ババ・ヴィダ要塞とカレト要塞という2つの保存状態の良い中世の要塞が残されています。これ以外にも、17世紀の聖パンテレイモン聖堂とペトカ聖堂、19世紀のGreatmartyr Demetrius聖堂、1894年のユダヤ教シナゴーグ、モスク、オスマン・パズヴァントウルの書庫、1798年の十字型の兵舎など、多くの歴史的建造物が点在しています。修復された古い建物も多く、歴史的な雰囲気を色濃く残す街並みが魅力です。

ヴィディン放送局

ヴィディン郊外には強力な中波放送局があり、ヨーロッパ全域に電波が届くことで知られています。576キロヘルツと1224キロヘルツで放送され、出力は500キロワットです。独特な形状の高塔がその存在感を示しています。

姉妹都市

ヴィディンは、トルコ、セルビア、ルーマニア、ウクライナ、アメリカ合衆国、ハンガリーなど、世界各国と姉妹都市提携を結んでいます。

ヴィディンは、その歴史と文化、そしてドナウ川という恵まれた立地条件を背景に、今後も発展を続ける重要な都市として注目に値します。

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