聖パンテレイモン

聖パンテレイモン（生年不明 - 305年頃）は、正教会、非カルケドン派、カトリック[[教会]]、聖公会で崇敬されるキリスト教の聖人です。正教会では特に「聖大致命者・廉施者」の称号で知られ、医師であったことから治癒者・施療医とも呼ばれています。

パンテレイモンという名は「最も慈悲ある者」を意味し、洗礼前の名前はパントレオン（「いかなる時も獅子のようであれ」の意味）でした。彼の生涯については諸説ありますが、教会の伝承では若くして殉教したとされています。

伝承

以下は、教会の伝承に基づく聖パンテレイモンの生涯です。

パントレオンの父は異教徒でしたが、母は熱心なキリスト教徒でした。母は幼いパントレオンにキリスト教の教えを伝えましたが、パントレオンが幼い頃に亡くなりました。その後、パントレオンは父から多神教徒として育てられました。

父の意向で、皇帝の侍医エウフロシムに医術を学んだパントレオンは、その才能を皇帝に認められ、将来の侍医として期待されるようになりました。医術を学ぶ中で、老司祭エルモライから声をかけられたことがきっかけで、パントレオンは母の教えを思い出し、エルモライからキリスト教の教えを受けるようになります。

ある時、パントレオンがイエス・キリストに祈りを捧げたところ、道端で蛇に咬まれた少年が奇跡的に助かりました。この出来事をきっかけに、パントレオンは洗礼を受け、パンテレイモンと改名しました。その後、パンテレイモンが盲人を癒す奇跡を起こし、それを見た父と癒された盲人もエルモライから洗礼を受けました。

父の死後、パンテレイモンは莫大な遺産を貧しい人々に分け与え、多くの病人を癒したため、彼の名声は高まりました。しかし、その名声を妬んだ同業の医師たちが、パンテレイモンが皇帝の禁じるキリスト教徒であることを告発し、処罰を求めました。皇帝はパンテレイモンに拷問を加え、棄教を迫りましたが、パンテレイモンは拒否しました。

皇帝は様々な刑罰を試みました。煮えたぎるスズの大釜に沈めたり、重い石を付けて海に沈めたり、猛獣に襲わせたり、鋭い針で覆われた車に縛り付けたりしましたが、パンテレイモンは無事でした。皇帝が「誰がこのような魔術を教えたのか」と問うと、パンテレイモンは「司祭エルモライがキリスト教の敬虔さを教えた」と答えました。

エルモライは皇帝の命令で連れてこられたパンテレイモンを見て、イエス・キリストが夢に現れてこれから起こる殉教について知らせてくれたことを告げました。エルモライは仲間の有無を問われ、エルミップとアルモクラトの二人を指名しました。この三人はその日のうちに処刑され、7月26日が彼らの記憶日となっています。

翌日、パンテレイモンの斬首刑が執行されました。オリーブの木に縛られたパンテレイモンが祈りを終えるまで刃が立たず、祈りを終えてから斬首が行われました。すると、オリーブの木は果実で覆われました。刑を執行した兵士をはじめ、その場にいた多くの人々が神を信じましたが、皇帝は信じず、オリーブの木を伐採し、パンテレイモンの遺体を焼くように命じました。しかし、遺体は全く焼けませんでした。

その後、キリスト教徒たちはパンテレイモンの遺体を丁重に葬りました。遺体の一部は、アトス山の聖パンテレイモン修道院に保管されています。

崇敬

パンテレイモンは治癒者として崇敬を集め、各地に彼を記念する聖堂や修道院があります。アトス山にある聖パンテレイモン修道院は、コンスタンディヌーポリ総主教庁の管轄下にありながらも、ロシア人修道士が集まり、教会スラヴ語で祈り、ロシア正[[教会]]の伝統に則って奉神礼を行っています。

セルゲイ・ラフマニノフは合唱曲『治癒者聖パンテレイモン』を作曲し、ニコライ・リョーリフはパンテレイモンを題材にした絵画を制作しました。

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