ヴィボルグ市立図書館

ヴィボルグ市立図書館：歴史と建築の融合

ヴィボルグ市立図書館、かつてのヴィープリ市立図書館は、ロシアのヴィボルグに位置する、その建築的価値と歴史的背景で知られる図書館です。フィンランドの実業家ユホ・ラッルッカの遺贈によって建設が企画され、建築家アルヴァ・アールトの設計が採用されました。

設計と建設

1927年、建築コンペでアールトの設計案が選ばれ、1928年から設計が開始されました。当初はL字型のプランでしたが、1933年に新たな設計案が提出されました。建設工事は1934年に始まり、1935年に完成、同年10月に開館しました。

第二次世界大戦とその後

第二次世界大戦中、講堂棟が一部損壊。戦後、ヴィープリはソ連領となり、ヴィボルグに改名されました。1955年から1962年にかけて、ピョートル・ロゼンブリュームらによって改修が行われましたが、この際、アールトの設計文書は参照されませんでした。

修復への道のり

1980年代末期、建築家セルゲイ・クラフチェンコが建物の状態に懸念を示し、1991年にヘルシンキで修復のための募金活動が開始されました。1992年には、エリッサ・アアルトやアールト建築事務所の関係者らがヴィボルグを訪問。フィンランドで修復委員会が設立され、1994年にアールトの設計に基づいた修復工事が始まりました。

ロシアとフィンランドの協力

資金不足により工事は長期間を要しましたが、2010年のロシア・フィンランド首脳会談で、ロシアが残りの工事費を負担することが決定しました。これにより、2011年に図書館は閉館、急ピッチで工事が行われました。2013年11月、タルヤ・ハロネンら臨席のもと再開館を果たしました。

建築の特徴

閲覧室棟の1階には図書閲覧室、2階には貸出カウンター、地階には児童向けの図書室と新聞閲覧室があります。講堂棟にはメインエントランス、ロビー、講堂があり、2階には事務室、地階には書庫があります。メインエントランスは建物の北側に、児童向け図書室の入口は南側に位置しています。講堂の天井は、音響効果を考慮した波状のデザインが特徴的です。

文化的遺産としての価値

ヴィボルグ市立図書館は、その建築的価値だけでなく、歴史的な変遷と国際的な協力によって修復された文化的遺産としての価値も高く評価されています。2000年と2002年には、ワールド・モニュメント財団によってワールド・モニュメント・ウォッチに選定されています。

詳細

閲覧室棟
1階：図書閲覧室
2階：貸出カウンター
地階：児童向け図書室、新聞閲覧室
講堂棟
1階：メインエントランス、ロビー、講堂
2階：事務室
地階：書庫
講堂
幅：約9メートル
奥行き：約25メートル
天井：波状のデザイン

参考資料

和田菜穂子（編）『アルヴァ・アアルト もうひとつの自然』国書刊行会、2018年
Michael Trencher 著、平山達 訳『アルヴァー・アアルト 建築ガイドブック』丸善、2009年
小泉隆『アルヴァ・アールトの建築 エレメント&ディテール』学芸出版社、2018年

外部リンク

ロシア語）'>公式ウェブサイト（ロシア語）
英語）'>公式ウェブサイト（英語）
ウィキメディア・コモンズ

この図書館は、単なる図書館としてではなく、フィンランドとロシアの歴史と文化を象徴する重要な建築物として、これからもその価値を伝え続けるでしょう。

もう一度検索