ヴィルヘルム・ペッテション＝ベリエル

ヴィルヘルム・オロフ・ペッテション＝ベリエル（Wilhelm Olof Peterson-Berger, 1867年 2月27日 - 1942年 12月3日）は、19世紀後半から20世紀にかけて活動したスウェーデンの作曲家であり、その率直すぎる筆致で知られた音楽評論家でもありました。

生涯

ペッテション＝ベリエルは、1867年にスウェーデン北部のボスニア湾に面したウランゲルで生を受けました。幼少期から青年期にかけては北部の海岸沿いのヴァステルボーテンで学校生活を送ります。音楽的な素養は母親から受け継いだといわれ、ベートーヴェンの『月光ソナタ』を弾く母の傍らで聴き入った経験が、彼の最初の音楽体験だったと伝えられています。彼は生涯を通じてピアノの即興演奏を愛し、作曲にも情熱を傾け続けました。

1886年、ストックホルムの王立音楽大学オルガン科に入学。間もなく作曲科での履修も認められ、音楽家としての基礎を固めます。

彼の創作活動において、スウェーデン中部、特にノルウェーとの国境に近い山岳地帯イェムトランド地方は、かけがえのない霊感の源泉となりました。初めてこの地を訪れたのは1889年の夏。翌年の夏には友人たちとハイキングに出かけ、そこで生まれた歌を演奏した記録も残っています。

1895年秋にストックホルムへと居を移し、音楽批評の道を歩み始めます。翌年には、スウェーデンの主要新聞であるダーゲンス・ニュヘテルの音楽評論家として迎えられ、1930年までその要職を務めました。彼の評論は常に率直で、時には棘があると感じさせるものでしたが、広く読者の支持を得る一方で、同業者からは敵意や嫉妬の感情を向けられることもありました。

この評論家として多忙を極めた時期は、作曲家としては試練の時でもありました。5曲の交響曲のうち、広く認められたのは第3番『ラップランド』のみであり、オペラも『アルンヨート』以外は評価が定まりませんでした。同時代の作曲家であるヒューゴー・アルヴェーンやヴィルヘルム・ステーンハンマルといった大家と比較され、やや影が薄い存在と見なされることもありました。

しかし、1914年には、愛してやまないイェムトランド地方、ストゥーシェン湖に浮かぶフレースエー島に別荘「ソンマルハーゲン」を建設します。彼はこの場所を「世界で最も美しい景色」と称し、1930年からは終の棲家として永住しました。

作曲家としての名声を不動のものとしたのは、1896年に発表した8曲のピアノ小品集でした。これが後に彼の代表作となる『フレースエー島の花々』第1集です。この作品は、エドヴァルド・グリーグの『抒情小曲集』やシューマンの影響を思わせる部分もありますが、表現力豊かな旋律、新鮮で独特な和声、そして柔軟なリズムといったペッテション＝ベリエル独自の作風が既に明確に表れています。技術的には非常に高度な演奏を求められるものではありませんが、その芸術的な完成度は高く評価されています。

1942年12月、エステルサンドの病院で逝去。病室の窓からは、愛着を寄せたフレースエー島を遠望できたと伝えられています。

ペッテション＝ベリエルがスウェーデン国民によって広く受け入れられたのは、彼の多くのピアノ小品、北欧の叙情的な歌曲であるロマンサー、そして合唱曲を通してでした。没後50年以上が経過してもなお、彼はスウェーデンのクラシック音楽界において、最も人気のある作曲家の一人として親しまれ続けています。

主な作品

管弦楽曲

5曲の交響曲を残しています。

交響曲第2番『旅は南風とともに』 (1910): まだ南国を訪れたことのなかった作曲家が、南への憧憬を込めて書いた作品。序奏に続く主要旋律は、底抜けに明るい雰囲気を湛えています。
交響曲第3番『ラップランド』 (1915): 第2番とは対照的に、スウェーデン北部のラップランド地方を題材としています。スウェーデンとフィンランドの国境付近に伝わる民謡素材を取り入れ、管弦楽にピアノを加えていること、第2楽章のスケルツォで独特な8分の10拍子を用いていることなどが特徴的です。
ヴァイオリンと管弦楽のためのロマンス (1915): 約10分程度の協奏曲風作品。切なくも美しいヴァイオリンの旋律が聴く者の心を引きつけます。

ピアノ曲

代表作『フレースエーの花々』（Frösöblomster, 『フレセ島の花々』などとも訳されます）は全3巻からなります。技巧的には平易ながら、芸術的に完成度の高い小品集です。

第1巻 (作品16, 1896)
帰還
夏の歌
ローンテニス
薔薇に寄す
お祝い
フレースエーの教会で
夕暮れに
挨拶
（このうち5曲は管弦楽に編曲されています。）
第2巻 (1900)
お日様への挨拶
イェムトランド
森の奥深く
聖ローレンスの祝日に
浜辺に寄せる波
想い出
第3巻 (1914)
前奏曲
夏の隠れ家に入居して
夕べの風景
民衆のユーモア
荒野の招き
ポプラの木の下で
何年も過ぎ

歌曲

スウェーデン民謡を基にしたものが多数あります。美しいピアノ伴奏も特徴的です。

オペラ

6曲のオペラを作曲しました。

ラン (1903)
* アルンヨート (1910)

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