ヴィージェイ・レコード

ヴィージェイ・レコード：ブルースからビートルズまで、アメリカ音楽史に刻まれたレーベル

ヴィージェイ・レコードは、1950年代から1960年代にかけてアメリカ合衆国で活躍した、影響力のあるレコードレーベルです。インディアナ州ゲーリーで、ヴィヴィアン・カーターとジェイムズ・ブラッケン夫妻によって1953年に設立されました。社名は2人の名前の頭文字から取られています。

当初はブルース、R&B、ゴスペルといったジャンルに焦点を当て、スパニエルズやジミー・リードといった著名なアーティストと契約。その後シカゴに移転し、ジョン・リー・フッカー、エルドラドス、メンフィス・スリム、ザ・デルズ、ジーン・アリソンなど、多くの実力派ミュージシャンを迎え入れました。これらのアーティストの作品は数々のヒットを記録し、ヴィージェイ・レコードの名を不動のものにしました。

1960年代に入ると、ヴィージェイ・レコードはソウル、ポップ、ロックなど、より多様な音楽ジャンルへと進出。グラディス・ナイト&ザ・ピップスのデビューシングル「Every Beat of My Heart」は、ビルボードポップチャートで6位を記録する大ヒットとなりました。さらに、白人アーティストとしては初めてフランキー・ヴァリ＆ザ・フォー・シーズンズと契約。彼らの「Big Girls Don't Cry」は、ポップチャートとR&Bチャートの両方で1位を獲得する快挙を達成しました。

そして、ヴィージェイ・レコードの歴史において最も重要な出来事と言えるのが、ビートルズのアメリカにおける権利獲得です。1962年、まだ無名だったビートルズの楽曲「ラヴ・ミー・ドゥ」や「プリーズ・プリーズ・ミー」、そして編集版アルバム『イントロデューシング・ザ・[[ビートルズ]]』などをリリース。これらの作品は大ヒットし、ヴィージェイ・レコードは巨額の利益を得ました。しかし、この成功は長くは続きませんでした。ビートルズのアメリカでの販売権を巡ってキャピトル・レコードと訴訟を起こし、また、ロイヤルティの問題からフォー・シーズンズとも袂を分かちます。

その後、ヴィージェイ・レコードはカリフォルニア州ロサンゼルスに移転し、新たなレーベル「トリー」を設立するも、業績は低迷。1966年には倒産という憂き目に遭いました。しかし、翌年にはベティー・チアペッタが破産管財人からレーベルを買収し、「ヴィージェイ・インターナショナル」として再出発。既存作品の再発を中心に活動を続けました。チアペッタは1990年に引退し、ダニエル・プリツカーが新経営者となり、レーベルは有限責任事業組合（LLP）となりました。

ヴィージェイ・レコードは、その短い歴史の中でブルース、R&B、ゴスペル、そしてロックンロールといった幅広い音楽ジャンルを網羅し、多くのアーティストを世に送り出しました。ビートルズのアメリカ進出における重要な役割も果たしたことは、音楽史における特筆すべき功績と言えるでしょう。彼らの残したレガシーは、音楽ファンの間で今もなお語り継がれています。 ヴィージェイ・レコードの物語は、成功と挫折、そして復活という、エンターテインメント業界の浮き沈みを如実に示すものです。

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