ヴェガ・フィルム

ヴェガ・フィルム社：スイスを拠点とする国際的な映画製作会社

ヴェガ・フィルム社は、スイス・チューリッヒに拠点を置く映画製作会社です。同社の設立者であり、現在も経営を担うのは、スイスを代表する映画プロデューサーの一人であるルート・ヴァルトブルゲール氏です。社名は「こと座α星」を意味する「ヴェガ」に由来しており、同社の国際的な活動範囲を象徴しています。

ヴァルトブルゲール氏のキャリアとヴェガ・フィルム社の設立

ヴァルトブルゲール氏は、イヴ・ガセール氏とイヴ・ペイロ氏の下で映画製作のキャリアをスタートさせました。アラン・タネール監督作品『メシドール』(1979年)では製作主任、そしてジャン＝リュック・ゴダール監督作品『パッション』(1982年)では製作に携わるなど、早くから映画界で重要な役割を担っていました。これらの経験を活かし、1988年にヴェガ・フィルム社を設立しました。

設立当初から、ヴェガ・フィルム社は国際的な視野と独自の資金調達戦略で知られていました。最初の作品は、ドキュメンタリー映画『Bailey House: To Live as Long as You Can』への単独出資です。この作品から、同社は多様なジャンルの作品に積極的に関わっていく姿勢を示しました。

ゴダール作品との深い関わり

ヴァルトブルゲール氏とゴダール監督の間には、深い信頼関係がありました。ゴダール監督とアンヌ＝マリー・ミエヴィル氏が経営する製作会社「ペリフェリア」社と共同で、「ペリフェリア・ヴェガ・フィルムAG」名義で複数の作品を製作しています。『フランス映画の2×50年』や『フォーエヴァー・モーツアルト』などがその代表的な例です。ヴェガ・フィルム社の製作履歴の中で、ゴダール監督作品は群を抜いて多くを占めています。ミエヴィル監督の作品にも出資しており、その幅広いネットワークと制作への情熱が見て取れます。

多様な共同製作と資金調達

ヴェガ・フィルム社は、アラン・サルド氏のサラ・フィルム社やレ・フィルム・アラン・サルド社、そしてパリの意欲的な新興製作会社であるホワイ・ノット・プロデュクシオン社など、様々な製作会社との共同製作を積極的に行っています。ホワイ・ノット・プロデュクシオン社は、パリに「シネマ・デュ・パンテオン」という映画館を所有するなど、映画界において大きな影響力を持っています。

資金調達においては、テレビ局や公的機関からの資金導入を得意としています。フランス国立映画センター（CNC）だけでなく、スイス連邦内務省、フランス文化通信省、フランス文化フランコフォニー省、メゾン・デ・ゼクリヴァン（フランス作家会館）、フランス著作権協会（Sacem）、ザルツブルク音楽祭、カンヌ国際映像番組祭（Procirep）など、多様な機関から資金を獲得することに成功しています。

1996年には、フランス・パリにアッヴェントゥーラ・フィルム社を設立し、フランスとスイスの二つの国籍を巧みに活用することで、作品制作、配給、資金回収を円滑に進めています。ヴァルトブルゲール氏の優れた手腕と豊富なネットワークが、ヴェガ・フィルム社の成功の大きな要因となっています。

ヴェガ・フィルム社のフィルモグラフィー

ヴェガ・フィルム社は、単独製作作品に加えて、数多くの国際共同製作作品を手がけてきました。その作品リストには、ゴダール監督作品だけでなく、テオ・アンゲロプロス、フィリップ・ガレル、レオス・カラックスなど、世界的に著名な監督の作品が含まれています。ジャンルもドキュメンタリーからドラマ、テレビ映画まで多岐に渡ります。これらの作品は、ヴェガ・フィルム社の幅広い制作能力と、国際的なネットワークの強さを示しています。

ヴェガ・フィルム社は、今後もスイスを拠点に、世界中の映画製作会社と連携し、多様な作品制作に取り組んでいくことでしょう。

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