ペリフェリア

ペリフェリア：ゴダールとミエヴィルが築いた映画製作の拠点

ペリフェリア (Périphéria) は、フランスとスイスに拠点を置く、映画製作会社です。その設立と経営には、世界的に著名な映画監督ジャン＝リュック・ゴダールとアンヌ＝マリー・ミエヴィルという、二人の巨匠が深く関わっています。1989年、ゴダールが長編映画『ゴダールの映画史』制作に専念するため、それまでの制作会社「JLGフィルム」の活動を停止したことが、ペリフェリア設立のきっかけとなりました。翌1990年、ゴダールとミエヴィルは、新たな制作拠点としてペリフェリアを設立し、精力的な活動を展開していきます。

ペリフェリアの軌跡：ヌーヴェルヴァーグの系譜と国際的な共同制作

ペリフェリアの設立第一作は、ゴダール監督作品『ヌーヴェルヴァーグ』でした。この作品には、ゴダール映画初出演となるアラン・ドロン、長年のゴダール作品に携わってきたアラン・サルド（プロデューサー）、そして『勝手に逃げろ/人生』以来10年ぶりとなるウィリアム・リュプチャンスキー（撮影監督）など、豪華なスタッフ陣が集結しました。続く1991年には、エディ・コンスタンティーヌを主演に迎え、ゴダールの解釈による『新ドイツ零年』を製作。この作品には、ヴィム・ヴェンダース作品にも出演したハンス・ツィシュラーや、ロマン・グーピルなど、多彩な顔ぶれが参加しています。

ペリフェリアは、ゴダールとミエヴィル単独あるいは共同監督作品のみならず、国際的な共同制作にも積極的に取り組んでいます。1992年には、ドイツを拠点に活動するストローブ＝ユイレ監督の『アンティゴネー』を共同制作。ストローブとユイレは、ゴダールとヌーヴェルヴァーグ以前から親交のある旧知の仲でした。また、1995年には、ゴダールと『カイエ・デュ・シネマ』誌で親交があったジャン・ドゥーシェの教え子であるグザヴィエ・ボーヴォワ監督の第二作を共同制作しています。これら共同制作作品には、ヌーヴェルヴァーグに関わった俳優や監督たちが多数参加し、ペリフェリアがヌーヴェルヴァーグの系譜を継承する存在であることを示しています。

ペリフェリアは、サラエヴォ紛争への関与を示すゴダール監督の短編映画『たたえられよ、[[サラエヴォ]]』（1993年）も製作しました。この作品は、ヌーヴェルヴァーグ時代の中心的プロデューサーであった故ラウール・レヴィへのオマージュとも捉えられます。アラン・ドロンやエディ・コンスタンティーヌといった、レヴィと関わりのあった俳優を起用した作品もペリフェリアでは製作されており、レヴィの影がペリフェリアの歴史に刻まれていると言えるでしょう。

1990年代後半以降も、ペリフェリアはゴダール、ミエヴィル監督作品を継続的に製作し、フランスとスイスの資本を組み合わせた合作を積極的に進め、アラン・サルドやルース・ウォルドバーガーといったプロデューサーとの共同制作も確立しています。映画都市パリからもハリウッドからも離れた、レマン湖畔のロールという小村に工房を構える、ゴダールとミエヴィルの独自の映画製作スタイルが、ペリフェリアのアイデンティティを形作っています。その社名「ペリフェリア」が示すように、映画界の中心部から少し離れた場所で、独自の映画制作を続ける彼らの姿勢は、映画界に新たな視点と刺激を与え続けています。

ペリフェリアのフィルモグラフィー：多様な作品群

ペリフェリアが製作に関わった作品は多岐に渡ります。ゴダール、ミエヴィルの監督作品だけでなく、ストローブ＝ユイレやグザヴィエ・ボーヴォワといった監督作品にも、ペリフェリアは共同制作として関わっています。これら作品は、フランス、スイスだけでなく、ドイツ、イギリスなど、複数の国と共同制作されているものが多く、ペリフェリアの国際的なネットワークと、その活動の広がりを示しています。共同制作には、カナル・プリュスやARTEといったフランスの主要テレビ局や、スイスのテレビ局、さらに、ドイツやイギリスの制作会社などが名を連ねており、ペリフェリアの国際的な評価の高さを示しています。

ペリフェリアの活動は、単なる映画製作にとどまらず、ヌーヴェルヴァーグ以降の映画史に大きな足跡を残す、重要な存在となっています。ゴダールとミエヴィルという二人の巨匠の情熱と、国際的な協力体制の下で生み出された作品群は、これからも映画界に影響を与え続けることでしょう。

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