ヴェズルフェルニル

ヴェズルフェルニル：北欧神話における風を鎮める鷹

北欧神話において、ヴェズルフェルニル（古ノルド語：Veðrfölnir）は、神聖な樹ユグドラシルと深いつながりを持つ鷹として知られています。その名は「風を打ち消すもの」を意味し、その威厳ある姿は古くから人々の想像力を掻き立ててきました。

主要な情報源である『ギュルヴィたぶらかし』によれば、巨大なトネリコであるユグドラシル、世界樹の枝には、鷲がとまっています。そして、その鷲の眉間には、もう一羽の鷹が止まっていると記されています。この眉間に留まる鷹こそが、ヴェズルフェルニルなのです。

残念ながら、『ギュルヴィたぶらかし』では、ヴェズルフェルニルが留まっている鷲の名前は明示されていません。しかし、多くの研究者や解釈において、この鷲はフレースヴェルグ（フレーベルク）と同一視される傾向があります。フレースヴェルグは、ユグドラシルに関連する別の強力な存在であり、ヴェズルフェルニルとの関係性から、世界樹の頂点における重要な役割を担っていると推測できます。両者の関係性をさらに解明するには、更なる史料の精査が必要となるでしょう。

ヴェズルフェルニルの存在は、文献上の記述だけにとどまりません。17世紀の写本『AM 738 4to』には、ヴェズルフェルニルを描いた挿絵が存在します。この挿絵は、当時の北欧におけるヴェズルフェルニルの認識や、その重要性を視覚的に裏付ける貴重な資料となっています。挿絵の描写から、ヴェズルフェルニルの羽の色や形、そして全体的な雰囲気など、具体的なイメージを想像することができます。

これらの情報から、ヴェズルフェルニルは単なる鷹ではなく、ユグドラシルという世界の中枢に位置する神聖な存在、あるいはその象徴として、北欧神話において重要な役割を担っていたと考えられます。「風を打ち消すもの」という名は、嵐や混乱といった世の中の災厄を鎮め、秩序を維持する力を持つ存在を暗示しているのかもしれません。また、世界樹の頂点に位置する存在であることから、神々と地上世界を繋ぐ役割、あるいは神々の意思を伝える役割を担っていた可能性も考えられます。

ヴェズルフェルニルに関する研究は、北欧神話の理解を深める上で欠かせないものです。今後の研究により、より詳細な情報が明らかになることが期待され、その神聖な姿が、より鮮明に浮かび上がってくることでしょう。関連する存在として、ヴィゾーヴニルなども研究対象として挙げられます。これらの存在を比較検討することで、北欧神話の宇宙観や、神々の役割について、より深い理解を得ることが可能となるでしょう。

もう一度検索