ヴェニアミン・カヴェーリン

ヴェニアミン・アレクサンドロヴィチ・カヴェーリン（1902年 - 1989年）は、ソ連を代表する小説家の一人です。本名をヴェニアミン・アレクサンドロヴィチ・ジーリベルといい、プスコフで音楽家の両親のもとに生まれました。幼少期から文学に親しみ、ユーリイ・トゥイニャーノフの指導を受けました。

モスクワ大学入学後、文学活動を始めますが、詩作では成果を上げられず、ペトログラード大学へ転校し文学史を専攻します。同時に東洋語大学でアラビア語も学びました。そんな中、短編「第十一の定理」が入賞し、文壇から注目を集めます。ミハイル・ゾーシチェンコらと「セラピオン兄弟」を結成し、創作活動を活発化させました。

1923年には最初の本『師匠たちと弟子たち』を刊行。ゴーリキーから評価を得ますが、ソビエト体制下での幻想小説執筆は困難であり、社会主義リアリズムへと方向転換します。代表作には『二人の船長』があります。また、1960年代にはブルガーコフの再評価やソルジェニーツィンの擁護など、ソビエト文学の民主化に尽力しました。晩年は児童文学も手掛け、幅広い分野で才能を発揮しました。

日本語訳された作品としては、以下があります。

『師匠たちと弟子たち』（沼野充義訳、月刊ペン社、1981年）
『地図にない町で - チズニナイ市奇談』（小宮山俊平訳、理論社、1985年）
『ヴェルリオーカ』（田辺佐保子訳、群像社、1991年）

カヴェーリンの作品は、ソ連の社会と文化、そして人間の内面を深く掘り下げたものとして、今もなお多くの読者を魅了しています。

参考文献

「SFマガジン1998年8月号（506号）」収録「戦後のロシア・ソヴィエトSF翻訳事情」（天野護堂）
『地図にない町で』巻末「あとがき - 作者についてのノート」（小宮山俊平）
『師匠たちと弟子たち』巻末解説「夢に見られて - ヴェニアミン・カヴェーリンの生涯と作品」（道吉昭治)

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