ヴェネツィアのゼッカ

ヴェネツィアのゼッカ、すなわち造幣局は、16世紀にヴェネツィア共和国が公式に硬貨を鋳造するために建設した重要な施設です。その歴史は1277年にリアルト地区に設立された最初の造幣局にまで遡りますが、その後、サンマルコ広場に程近い共和国のオフィスエリアに移転しました。この移転は、共和国の中枢機能との連携を強化する目的があったと考えられます。

現在のゼッカの建物は、1536年から1545年の間に建設されました。設計を手掛けたのは、当時ヴェネツィアで活躍していた建築家ヤーコポ・サンソヴィーノです。造幣局という特性上、火災のリスクを考慮して木材は一切使用されておらず、イストリア半島から産出される大理石が主な建材として採用されています。この堅牢な外観は、同じサンソヴィーノが設計した隣接する国立マルチャーナ図書館の華麗な装飾とは対照的です。

ゼッカの入口には、2体のテラモーン（男性像の柱）が設置されたアーチがあります。この特徴的な入口のデザインは、サンソヴィーノの弟子であるヴィンチェンツォ・スカモッツィによって手がけられました。建物の中心部には中庭があり、そこにはダネーゼ・カッターネオ作のアポロ像が設置されています。このアポロ像は、古代ギリシャ・ローマの芸術を彷彿とさせる美しさで、ゼッカの厳かな雰囲気の中で際立った存在感を放っています。

ヴェネツィア共和国時代、ゼッカは様々な種類の硬貨を鋳造していました。しかし、1870年にヴェネツィアがイタリア王国に編入されると、硬貨の鋳造は中止されました。ゼッカで製造された硬貨は、ヴェネツィア共和国の経済と文化を支える重要な役割を果たしていました。現在、ゼッカの建物は国立マルチャーナ図書館の一部として利用されており、その歴史的な価値を今に伝えています。かつての造幣局としての機能は失われましたが、その建築美は今もなお人々を魅了し続けています。

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