造幣局

造幣局とは

造幣局は、硬貨の鋳造や貴金属の品位証明を行う政府機関です。世界各国の経済活動を支える重要な役割を担っています。

造幣局の歴史

前硬貨時代 - 硬貨の発明

最古の金属製の貨幣は、硬貨ではなく、リング状や武器のような形（刀銭）をしていました。これらの貨幣は、中国、エジプト、カルデア、アッシリアなどで数千年にわたり使用されていました。

硬貨の歴史は、紀元前7世紀のリュディア王国で最初の硬貨であるエレクトロン貨が製造されたことに始まります。国家が硬貨を製造するという概念は、すぐにギリシャなど周辺地域に広まりました。同時期には中国でも独自の造幣局が設立され、そこから日本にも伝わりました。

英語の「Mint（造幣局）」という言葉は、紀元前269年にローマの造幣所が女神ユーノー・モネータの寺院であったことに由来します。また、この女神は「Money（お金）」の語源にもなっています。

初期の生産

古代ローマでは、当初は打刻技術がなかったため、溶かした銅を粘土の鋳型に流し込む鋳造方法で硬貨（青銅貨アス）を製造していました。初期の製造では、弾丸状または円錐状に鋳造し、ハンマーで叩いて片面だけに意匠を施していました。その後、金床側にも意匠を施すようになり、球状だった無地貨幣はレンズ状に変化しました。これらの貨幣は熱いうちにハンマーで叩く必要がありました。西暦300年頃には、青銅製の金型から鉄製の金型に変わり、冷えた状態での整形が可能になりました。

スクリュープレス加工

しばらくの間は、重りを乗せることで意匠を施す方法が使われていました。しかし、1553年、フランス人技師オーバン・オリヴィエが、スクリュープレスを用いて意匠を施す技術と、平らな金属板から打ち抜く機械を導入しました。その後、打ち抜きやプレス加工は人力で行われていましたが、馬やラバ、水力を動力源とするようになりました。

産業革命と工場生産

1788年、バーミンガムのマシュー・ボールトンによって、産業技術と蒸気力が導入されました。イギリスでは、14世紀から小額貨幣の不足が問題視され、17世紀後半には状況が悪化しました。18世紀になると、人口増加やグレシャムの法則によって偽造通貨が蔓延し、銀貨が国外に流出しました。1786年には、流通している通貨の3分の2が偽造通貨となり、王立造幣局が操業を停止する事態となりました。

これに対し、実業家のマシュー・ボールトンは自身の工場内に造幣局を設置し、硬貨を製造する蒸気機関を発明しました。この蒸気機関は王立造幣局にも導入され、1881年まで使用されました。ボールトンの会社は特許を取得し、ロシアやアメリカなど海外の硬貨製造も請け負いました。フィラデルフィアに2000万枚以上の無地硬貨を送った際、当時の造幣局長エリアス・ブーディノットは「完璧で美しく仕上がっている」と賞賛しました。

その後、標準化された寸法や均一の重量、真円度などによる偽造通貨対策技術が導入されました。20世紀になると、蒸気機関から電力に動力が切り替わるなどの改善が行われました。

まとめ

造幣局は、古代から現代に至るまで、貨幣の製造技術の進歩とともに発展してきました。その歴史は、技術革新と経済発展の歴史そのものと言えるでしょう。

関連項目

造幣局の一覧
貨幣史
実物貨幣
エラーコイン

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