ヴェリコ・カディイェヴィッチ

ヴェリコ・カディイェヴィッチ：ユーゴスラビアの軍人、国防大臣

ヴェリコ・カディイェヴィッチ（1925年11月21日 - 2014年11月2日）は、ユーゴスラビア人民軍の地上軍元帥であり、1988年から1992年までユーゴスラビア社会主義連邦共和国の国防大臣を務めました。十日間戦争やクロアチア紛争初期には、事実上のユーゴスラビア人民軍総司令官として活動しました。

生い立ちと軍歴

カディイェヴィッチは、現在のクロアチア共和国領であるイモツキ近郊の村で、セルビア人の父とクロアチア人の母の間に生まれました。民族的には「ユーゴスラビア人」を自称していました。1942年にはユーゴスラビア共産党に入党し、人民解放軍（パルチザン）の一員として第二次世界大戦に参加。戦後もユーゴスラビア人民軍に所属し、1963年にはアメリカ陸軍指揮幕僚大学に留学しています。

国防大臣として

ユーゴスラビア共産主義者同盟が解体された後、カディイェヴィッチはその後継組織である共産主義者同盟ユーゴスラビア運動の創設者の一人となりました。1991年5月には、「平和の確保に失敗した。ユーゴスラビア軍はより効率的にそれが出来るはずだった」と公言。その後、全ての役職を辞任し、軍を退役してセルビアに隠居しました。

戦犯訴追と亡命

2001年春、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷（ICTY）はカディイェヴィッチに接触を試みましたが、彼はモスクワに逃亡し、ロシア政府に難民申請を行いました。この申請は2008年に承認され、ロシア市民権を取得。モスクワで生活していたことが確認されています。

訴訟手続き

カディイェヴィッチに対する最初の公訴は1992年11月にビェロヴァルで起こされ、その後ヴコヴァルやオシエク＝バラニャでも同様の訴訟が行われました。2007年6月には、クロアチア内務省が「民間人に対する戦争犯罪」を理由に逮捕状を発行。インターポールも同様に逮捕状を発行しました。クロアチア政府はロシア政府にカディイェヴィッチの引き渡しを要求しましたが、ロシア側は応じていません。

マルコ・アッティラ・ホアーによると、ICTY調査団はミロシェヴィッチ、カディイェヴィッチら旧ユーゴスラビアの高官を「協同犯罪組織」として起訴しようとしましたが、当時の検事によって却下され、ミロシェヴィッチのみが起訴されることになりました。

2007年のインタビュー

2007年、カディイェヴィッチに関する報道が再び注目を集めました。当初、アメリカ・フロリダ州に滞在しているという情報が流れましたが、後に誤りであることが判明。同時期に、イラクでアメリカ軍の顧問として働いている、あるいはドミトリー・ヤゾフ将軍の助けを得てモスクワに暮らしているといった情報も報じられました。

2007年3月には、クロアチアのニュースサイトがカディイェヴィッチのインタビューを掲載し、彼がイラクで連合軍の顧問として働いていることを認めたと報じました。しかし、「永遠にここで働くわけではない」とも語り、現在の居場所については明言しませんでした。

2007年10月には、自著の宣伝のためにモスクワに姿を現し、その後セルビアやクロアチアのメディアのインタビューに応じました。インタビューの中で、彼は2000年以降ロシアに難民として暮らしていること、オヴチャラ虐殺事件については退役後に知ったこと、そしてユーゴスラビア人民軍はユーゴスラビアを守るために活動していたと主張。ICTYを政治機関であるとして、その裁判を認めないと述べました。

また、ユーゴスラビアの危機を解決するために軍事的反乱を計画したことはないと主張。ボリサヴ・ヨヴィッチ大統領が「カディイェヴィッチと軍が反乱を提案した」と証言したことに対しては、ヨヴィッチが嘘をついていると断言しました。カディイェヴィッチによれば、クーデター計画を持ちかけてきたのはミロシェヴィッチであり、自身はそれを拒否したとのことです。

ヴェリコ・カディイェヴィッチは、ユーゴスラビアの激動の時代を象徴する人物の一人として、その生涯は多くの議論を呼んでいます。

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