ヴェルバーノ・クジオ・オッソラ県

ヴェルバーノ・クジオ・オッソラ県（イタリア語: Provincia del Verbano Cusio Ossola）は、イタリア共和国ピエモンテ州の最も北に位置する県です。その行政の中心である県都はヴェルバーニアに置かれています。

名称の由来

この県の名称は、その領域に含まれる三つの地域名に由来しています。それは、イタリアで二番目に大きい湖であるマッジョーレ湖の別名「ヴェルバーノ」、オルタ湖の雅称「クジオ」、そしてこれら二つの湖の北側に広がる山岳地帯「オッソラ」です。これらの地域名が組み合わされており、「Verbano-Cusio-Ossola」のようにハイフンで繋げて表記されることもあります。

地理

ヴェルバーノ・クジオ・オッソラ県は、ピエモンテ州の北部、雄大なアルプス山脈の南麓に位置しています。特に北側ではスイスと国境を接しており、スイスのヴァレー州やティチーノ州と隣接しています。県域は北に向かって尖るような三角形をしており、南東部ではマッジョーレ湖を挟んでロンバルディア州のヴァレーゼ県と向かい合っています。ピエモンテ州内では、南にノヴァーラ県、南西にヴェルチェッリ県と境を接しています。

県内の主要な地理的特徴は、マッジョーレ湖とオルタ湖という二つの大きな湖と、その北側の山岳地帯「オッソラ」にあります。オッソラ地域は、マッジョーレ湖に流れ込むトーチェ川によって形成された広大な谷筋、ヴァルドッソラを中心に構成されており、多くの支流が小さな谷を形成しています。県北部からは、スイスのシンプロンへ通じるシンプロン峠が越えられます。この峠越えのルートは、かつて70年以上にわたり世界最長の鉄道トンネルであったシンプロントンネルにもその名を留めています。また、県内のヴィガネッラ村は、冬季の日照不足を解消するために太陽光を反射する巨大な鏡を設置したことで国際的に話題となりました。

主要都市・集落

県民の多くは、比較的温暖で平野部が多いマッジョーレ湖周辺に居住しています。2001年の国勢調査に基づく人口5000人以上の主要な都市・集落は以下の通りです。

ヴェルバーニア (PALLANZA-INTRA): 約28,700人。県都であり、マッジョーレ湖畔の中心地です。
ドモドッソラ: 約18,044人。オッソラ地域の中心都市です。
オメーニャ: 約14,615人。オルタ湖畔の主要都市です。
グラヴェッローナ・トーチェ: 約7,026人。
ヴィッラドッソラ: 約6,748人。

これらの都市は、前述のヴェルバーノ、クジオ、オッソラという三つの地域区分に対応しています。

歴史

ヴェルバーノ・クジオ・オッソラ県は、イタリアの県としては比較的新しく、1992年にそれまで属していたノヴァーラ県から分離して新たに設立されました。

行政区画

2019年1月1日時点で、県内には74のコムーネ（基礎自治体）が存在します。近年、人口減少や効率化などを背景に、複数のコムーネが合併する動きが見られます。例えば、2016年にはセッピアーナ村とヴィガネッラ村が合併してボルゴメッツァヴァッレ村となりました。また、2019年にはカヴァーリオ＝スポッチャ、クルソロ＝オラッソ、ファルメンタの三つのコムーネが合併し、ヴァッレ・カンノビーナという新しいコムーネが誕生しました。

文化・観光

この県は美しい自然景観だけでなく、歴史的・文化的な魅力も有しています。ユネスコ世界遺産「ピエモンテ州とロンバルディア州のサクリ・モンティ（聖なる山）」に含まれる九つの巡礼施設のうち、二つが県内にあります。これらは「ギッファのサクロモンテ」と「ドモドッソラのサクロモンテ（カルヴァリオ）」です。

また、この地域は著名な文学作品の舞台ともなっています。アーネスト・ヘミングウェイの代表作『武器よさらば』（1929年発表）では、第一次世界大戦中の出来事が描かれ、主人公がマッジョーレ湖畔のストレーザで恋人と再会し、湖を渡ってスイスへ逃れる重要な場面がこの地域で展開されます。

交通

県内には、イタリア国内を結ぶ重要な道路網に加え、スイスとの国際的な交通路も整備されています。

道路: 欧州自動車道路E62号線が県内を通り、国内の高速道路A26も利用できます。その他、主要な国道として、シンプロン峠へ向かうSS33、マッジョーレ湖沿いを走るSS34、SS337、SS659などがあります。
* 鉄道: スイスとの国境を越える鉄道路線が特に重要です。ドモドッソラとスイスのブリークを結ぶシンプロントンネルは、1906年の開通以来、70年以上にわたり世界最長の鉄道トンネルでした。その他、主要な鉄道路線には、ブリガ＝ドモドッソラ線、ドモドッソラ＝ミラノ線、ドモドッソラ＝ロカルノ線、ノヴァラ＝ゴッツァーノ＝ドモドッソラ線などがあり、県内外やスイスとの交通を支えています。

県に関するより詳細な情報は、県公式サイト（イタリア語）で確認することができます。

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