ヴェルフ1世 (バイエルン公)

ヴェルフ1世は、11世紀の神聖ローマ帝国において重要な役割を果たした貴族であり、ヴェルフ＝エステ家の祖として知られています。彼は1035年から1040年の間に生まれ、1101年に亡くなりました。父はエステ家の祖であるアルベルト・アッツォ2世・デステ、母はヴェルフ2世の娘クニグンデです。彼はヴェルフ家ではヴェルフ4世とも呼ばれます。

ヴェルフ1世の生涯は、当時のヨーロッパの政治情勢、特に神聖ローマ皇帝と教皇の間の権力闘争に深く関わっています。1055年、母方の叔父であるヴェルフ3世が亡くなり、古ヴェルフ家が断絶したため、ヴェルフ1世は祖母イミツァに招聘され、ヴェルフ家の新たな当主となりました。1062年には、バイエルン公オットー・フォン・ノルトハイムの娘エテリンデと結婚しましたが、1070年に義父が神聖ローマ皇帝ハインリヒ4世に謀反の罪で追放されると、エテリンデと離婚し、ハインリヒ4世からバイエルン公に任命されました。

しかし、ハインリヒ4世とローマ教皇グレゴリウス7世が叙任権闘争で激しく争うようになると、ヴェルフ1世は教皇側につき、1077年にはシュヴァーベン公ルドルフを対立王として擁立しました。この結果、ハインリヒ4世によってバイエルン公の地位を追われ、バイエルンは皇帝の直接統治下に置かれることになります。教皇派との連携を維持するため、1089年に長男のヴェルフをトスカーナ女伯マティルデ・ディ・カノッサと結婚させました。しかし、ヴェルフ2世は1095年にマティルデと離婚し、翌1096年にヴェルフ1世はハインリヒ4世と和解してバイエルン公位を取り戻しました。1097年には父が亡くなった後、異母弟のフォルコ1世と遺産を巡って争いました。

ヴェルフ1世は1101年の十字軍に参加しましたが、帰途のキプロス島で亡くなりました。遺体はヴァインガルテン修道院に埋葬されています。

ヴェルフ1世は生涯で2度の結婚を経験しました。最初の結婚では子を儲けることはありませんでしたが、2度目の結婚で3人の子を授かりました。最初の結婚は1062年にバイエルン公オットー・フォン・ノルトハイムの娘エテリンデとでしたが、1070年に離婚しました。2度目の結婚は1071年にフランドル伯ボードゥアン4世の娘ユーディト（トスティ・ゴドウィンソンの未亡人）とで、彼らの間には以下の3人の子供がいました。

ヴェルフ2世（1072年/1073年 - 1120年）
ハインリヒ9世（1074年/1075年 - 1126年）
* クニグンデ（? - 1120年）

ヴェルフ1世の生涯は、11世紀のヨーロッパの政治的な変動期を象徴しています。彼は、神聖ローマ皇帝と教皇という二つの権力の間で、複雑な駆け引きを強いられながらも、一族の繁栄のために尽力しました。ヴェルフ家の歴史を語る上で、彼の存在は非常に重要な意味を持っています。

参考文献として、カール・ヨルダン著『ザクセン公ハインリヒ獅子公』瀬原義生訳、ミネルヴァ書房、2004年が挙げられます。

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