エステ家

エステ家：イタリア貴族の名門

エステ家（Este）は、イタリアの有力な貴族であり、その起源はオベルテンギ家に遡ります。11世紀にアルベルト・アッツォ2世がエステ辺境伯の地位を獲得したことが、家名の由来となりました。その後、エステ家はフェラーラ侯、モデナ侯、レッジョ侯へと発展し、約400年にわたりこれらの地域を統治しました。特に、学芸や美術の保護に力を注ぎ、ルネサンス文化の発展に大きく貢献したことで知られています。

歴史

エステ家の歴史は、10世紀末にミラノやリグーリア西部を支配したフランク族のオベルテンギ家に端を発します。オベルテンギ家は、パッラヴィチーノ家、カヴァルカボ家、パストリーノ家、マラスピーナ家など、多くの貴族の家系を輩出しました。エステ家の記録に残る最も古い祖先は、オベルト1世です。10世紀初頭のアダルベルト・デステは、トスカーナの君侯の末裔であり、フランク族の法ではなくランゴバルド族の法に従いました。1011年の記録では、アダルベルトは侯爵と称されています。エステ家の系譜において重要な人物の一人が、10世紀後半から11世紀初頭に生きたオベルト1世とオベルト2世です。そして、アルベルト・アッツォ2世（996-1097年）がエステ辺境伯の地位を得たことが、エステ家の家名が確立する決定的な出来事となりました。

アルベルト・アッツォ2世の息子の一人、グエルフォ4世（ヴェルフ1世）は、母方の叔父であるヴェルフ3世の養子となり、1070年にはバイエルン公となりました。これにより、新ヴェルフ家が誕生しました。一方、エステ家のイタリアの家系は、アルベルト・アッツォ2世のもう一人の息子、フォルコ1世に繋がります。

イタリアにおけるエステ家

フォルコ1世の跡を継いだオビッツォ1世は、神聖ローマ皇帝フリードリヒ1世と戦いました。その孫であるアッツォ6世は、初代フェッラーラ君主となり、マントヴァとヴェローナの執政長官も兼任しました。アッツォ6世の息子、アルドブランディーノ1世は、パドヴァ人の攻撃を受けてエステを失い、アッツォ7世はフェッラーラを失いました。しかし、アッツォ・ノヴェッロ7世が1242年にフェッラーラを再征服し、ギベリン派を粛清しました。また、エッツェリーノ3世との戦いに勝利したことで、教皇インノケンティウス4世から「教会の擁護者」の称号を授けられました。オビッツォ2世は、フェッラーラ侯、モデナ侯、レッジョ侯を兼ねるようになり、エステ家の勢力は拡大しました。

1332年、フェッラーラは教皇領でしたが、エステ家は教皇代理となりました。1333年には教皇軍に包囲されるも、ピナッラ・アリプランディが教皇軍を破りました。ニッコロ3世の時代には、フェッラーラはルネサンス文化の中心地となり、その栄華は後継者たちによってさらに発展しました。特にレオネッロ・デステは、その文化的な貢献で知られています。

フェッラーラ、モデナ、レッジョ公爵と重要人物

ボルソ・デステは、1452年にモデナ・レッジョ公の称号を、1471年にはフェッラーラ公の称号を授与されました。これは、モデナとレッジョが神聖ローマ皇帝の支配下にあったのに対し、フェッラーラが教会国家の領土であったことによります。ニッコロのもう一人の息子であるエルコレ1世は、ポレジーネのエステ家支配地域の一部を失いました。エルコレの娘たち、ベアトリーチェはミラノ公ルドヴィーコ・スフォルツァと、イザベッラはマントヴァ侯フランチェスコ2世・ゴンザーガと結婚しました。

エルコレ1世の後継者であるアルフォンソ1世は、ルクレツィア・ボルジアと結婚し、フェラーラはルネサンス文化が花開きました。ヴェネツィアに対抗するカンブライ同盟に加盟し、その後、フランスと同盟関係を保ったため、教皇から破門されました。1526年から1527年にかけて、神聖ローマ皇帝カール5世の遠征に参加し、1530年にフェッラーラ公の地位を取り戻しました。アルフォンソの跡を継いだエルコレ2世は、フランス王ルイ12世の娘レナータと結婚し、教皇やフランスと共にスペインと戦いました。弟の枢機卿イッポーリト2世は、ティヴォリに有名なヴィッラ・デステを建設しました。

モデナ・レッジョ公（1598年-1796年）

エルコレ2世の息子アルフォンソ2世には子供がいなかったため、エステ家直系の血筋は途絶えました。皇帝ルドルフ2世はチェーザレ・デステをモデナ・レッジョ公と認めましたが、教皇クレメンス8世はフェッラーラを教皇国家の直轄領としました。最後の公爵エルコレ3世は、1796年にフランス軍によって廃位され、1803年に亡くなりました。しかし、エルコレ3世の娘マリア・ベアトリーチェが、ハプスブルク家のフェルディナントと結婚し、ハプスブルク＝エステ家が誕生しました。

モデナ・レッジョ・マッサ公、カッラーラ侯

1814年に再興後、マリア・ベアトリーチェの息子フランチェスコ4世がモデナ・レッジョ・マッサ公、カッラーラ侯となりました。その後、フランチェスコ5世が1859年に廃位し、公爵領はサルデーニャ王国に併合されました。

現在、フェラーラのエステ城（エステンセ城）は一般公開されており、ティヴォリのエステ家別荘は2001年に世界遺産に登録されました。また、ドイツのヴェルフ家は、アルベルト・アッツォ2世の息子ヴェルフが継承し、男系でエステ家に連なっています。イタリアのエステ家は、アルベルト・アッツォ2世と二番目の妻の間の息子フォルコ1世が継承しました。

エステ家は、その長い歴史の中で、政治、文化、芸術に多大な影響を与え、イタリアの歴史に重要な足跡を残しました。

関連事項

エステ (イタリア)
エステ辺境伯
ヴェルフ＝エステ家
オーストリア＝エステ家
フェラーラとモデナの君主一覧
狂えるオルランド　エステ家の起源が描かれている。

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