ヴェンツェル1世 (ルクセンブルク公)

ヴェンツェル1世は、1337年2月25日にボヘミア王ヨハンの息子としてプラハで生まれました。母はブルボン公ルイ1世の娘ベアトリスであり、神聖ローマ皇帝カール4世やモラヴィア辺境伯ヨハン・ハインリヒとは異母兄弟にあたります。彼はルクセンブルク家の初代公爵であり、ブラバント公も兼ねた人物です。

1353年、異母兄であるカール4世が神聖ローマ皇帝に即位すると、ヴェンツェル1世はルクセンブルクの統治を任されました。1355年には、カール4世の力添えによりルクセンブルク伯から公爵へと昇格を果たします。同年、ヴェンツェル1世はブラバント公ジャン3世の娘ジャンヌと結婚。この結婚により、1355年にジャン3世が亡くなると、ヴェンツェル1世は妻ジャンヌと共にブラバント公とリンブルク公領を継承する権利を得ることになります。

しかし、ブラバント公領の継承はそう簡単にはいきませんでした。ヴェンツェル1世とジャンヌは、ブラバントの不可分性を保証する「いとも喜ばしき入城」の協定に署名しましたが、これは相続による公領の分割を否定するものでした。この協定に対し、ヴェンツェルの義弟であるフランドル伯ルイ2世などが公領の分割を主張し、争いが勃発します。事態を打開するため、ヴェンツェル1世とジャンヌは1356年、カール4世に仲裁を依頼し、軍事的な支援を求めました。カール4世はマーストリヒトで関係者を集め協議を行いましたが、結果としてルクセンブルク家にとっては不利な条件が提示されました。ルクセンブルク家はブラバントの継承権を保持できず、ジャンヌの死後は、妹であるマルグリットがブラバントを継承することになったのです。ただし、マルグリットは1368年にジャンヌに先立って亡くなりました。

また、フランドル人の抵抗によりブリュッセルの確保に失敗しましたが、同年10月にはブリュッセルの市民の活躍によってフランドル人を追い出すことに成功します。しかし、その後は所領内部での争いに多くの精力を割かねばなりませんでした。1371年にはユーリヒ公国との争いで有力な貴族や軍隊を失い、自身も11ヶ月間の捕虜生活を送るという苦難も経験しています。

ヴェンツェル1世は1383年12月7日に亡くなりました。死因についてはハンセン病であったという説もあります。彼の最後の願いは、亡くなった後に心臓を妻ジャンヌの元へ送ることでした。妻ジャンヌとの間に子供はいませんでした。

ヴェンツェル1世の死後、ルクセンブルク公位は甥であるカール4世の長男ヴェンツェル（後のローマ王）が継承しました。そして、1406年にジャンヌが亡くなると、ブラバント公領はマルグリットとルイ2世の孫にあたるヴァロワ＝ブルゴーニュ家のアントワーヌ（フィリップ豪胆公の息子）が継承することとなりました。

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